契約前に売主と買主で取決めておくべきことについて

契約前には、売主と買主で取決めておくべきポイントがいくつかあります。

主なものは次のようなものになります。

①契約日と決済日
②売主が欠席の場合はその旨(誰が代理人になるのか)
③手付金の額
④印紙はどちらが用意するのか
⑤代金固定売買か実測売買か
⑥契約不適合責任はどうするのか
⑦測量はどうするのか
⑧未登記事項がある場合はどうするのか
⑨越境等がある場合はどうするのか
⑩動産が残っている場合はどうするのか
⑪登記を依頼する司法書士はどうするのか

①契約日と決済日について
契約日と決済日を取り決める必要があることについては、あえて説明するまでもないと思います。
なお、決済日については、確定測量等の作成状況や、合意書等の取得状況等によって当初取り決めた日から前後する可能性はあります。
決済日が契約書に記載した日付よりも後ろにずれる場合は、決済日変更の合意書を取り交す必要が生じます。

②売主が欠席の場合はその旨(誰が代理人になるのか)について
売主が当日出席できず、契約に売主の代理人がくるということもあります。
その際は、契約前する前に、登記手続きを依頼する司法書士による売主の「本人確認」が必要になります。
その他、宅建業者としても本人確認をするのは当然のことですが、売主本人に「売却の意思確認」「意思能力の確認」等をする必要があります。

③手付金の額について
手付金の額をあらかじめ決めておきます。
原則として1割が妥当だと思いますが、売主・買主の状況によっては変更しても構いませんし、宅建業者として手付金なしの契約を勧める必要が生じることもあります。

④印紙はどちらが用意するのか
印紙は契約書の原本を1通とする場合は、原本を所有する側(通常は買主)が支払うのが良いと思います。
なお、契約書を1通とする契約は実際に良く行われていますが、本来であればやはり契約書の原本は売主分と買主分の2通作成し、印紙もそれぞれ1通分ずつ負担するのが良いです。

⑤代金固定売買か実測売買かについて
代金固定売買か、実測売買(実測清算の有無はどうするか)のどちらを選択するかについてです。
決め方はいろいろありますが、土地の単価等によってどちらを選択するかや、登記記録と実測面積が大幅にずれていることが予想される場合に、実測売買を選択するなど決めていくと良いでしょう。
気を付けなければならないのは、不動産業界の人は、登記記録の地積と現況の地積に差異があることは良く知っていますが、不動産業に関わりのない方は、登記記録の地積と現況の地積に差異があるなどとは思ってもいない方もたくさんいるということです。
その認識の差がトラブルを生む原因になりますので、注意しましょう。

⑥契約不適合責任はどうするのかについて
契約不適合責任を免責できる場合は、免責するのか否か等について取決めます。
ただし、契約不適合責任を免責にしたとしても、売主が知りながら買主に告げなかった事実については免責にはできませんので、売主にはしっかりと必要な告知をしてもらう必要があります。

⑦測量はどうするのかについて
確定測量にするのか、接面道路部分等の公の土地の立会いを除いた測量とするのか、又は測量をしないのか等の取決めをします。
ただし、測量をしない場合でも、境界確認は必ずするようにしましょう。

⑧未登記事項がある場合はどうするのかについて
建物に未登記がある場合等はどうするかについて取決めておきます。
建物に未登記があったとしても、買主が物件を取得した後にその建物を取壊す予定なのであれば、建物の未登記部分について登記をする必要はないと思います。
なお、売主自身の登記事項に変更(相続登記未了、住所変更登記未了等)がある場合は、売主の責任と負担により、物件の引渡し時までに登記をしてもらいます。

⑨越境等がある場合はどうするのかについて
調査対象物件に越境等がある場合は、どのようにするかをあらかじめ取決めます。
具体的には「所有権移転登記までに越境を解消する」「将来越境を解消するために合意書を取得する」「越境を許容する(合意書は取得するのか。しないのか)」等になります。

⑩動産が残っている場合はどうするのかについて
対象物件に動産がある場合は、その動産の処理を売主が行うのか、買主が行うのかについて取決めておきます。

⑪登記を依頼する司法書士はどうするのかについて
登記を依頼する司法書士について取決めます。
売主側が選んだ司法書士の場合、その司法書士が問題のある人物ではないかについて、確認しておいた方が良いでしょう(地面市等の詐欺行為を防ぐため)。
不動産流通の専門家は、司法書士等の専門家といえども完全に信用しきって任せきることはできません。

上記が全てではなく、物件によっては「通行掘削承諾」が必要だったり、「上水道私設管の使用承諾」が必要だったり、「埋蔵文化財包蔵地内に存する土地」の流通では「発掘調査にならないか」の確認が必要だったりします。また、物件によっては「買換特約」が必要だったりと、不動産や当事者によって、選択する条件は多岐にわたります。
それら一つひとつを完璧に処理していけるように日頃から研鑽を積んでいく必要があります。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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