合意書、道路通行掘削等承諾書、私設管使用承諾書、協定書について

不動産の取引では、重要事項説明書、売買契約書以外にも調査対象物件によって必要になる書類があります。

その中でも重要度が高い書類が「合意書」「道路通行掘削等承諾書」「私設管使用承諾書」「協定書」です。
今回は、それぞれの書類がどのような目的で作成されるのかを説明していきます。

・合意書について
合意書は多くの場合、調査対象物件に越境物がある場合に作成します。
まず前提として、越境物がある場合に考えなければならないことは、「越境物の解消」です。
ですが、直ちに越境物を解消しようとすると、費用が発生するような場合も多いです。
そのような事情により、すぐに越境を解消することが現実的に難しいと判断される場合、「将来、越境物の解体等をする際には、越境を解消する」旨の合意書を作成し、当事者間で取り交しておきます。

・道路通行掘削等承諾書について
調査対象物件の接面道路が私道であり、その道路を通行・掘削する必要がある場合に作成します。
私道は道路形状をしていたとしても他人の土地ですので、本来であれば自由に使用することはできません。
自分も持分を持っていれば通行くらいは認められるかもしれませんが、それ以上の行為は他の共有者の同意を得て行う必要があります。
そのための承諾書が、通行掘削承諾書になります。
なお、接面道路が建築基準法上の道路である場合は、通行掘削が不要だと考えている人がいるようですが、誤りです。
建築基準法上の道路であることと、私道であることは、全く別の論点であり、たとえ建築基準法上の道路であったとしても、私道であれば道路通行掘削等承諾書は必要ですので注意しください。
ただし、建築基準法上の道路のうち1項1号の道路は、所有者が私人の場合もありますが、維持管理が公に移管されていますので、この書類の取得を不要としても問題は生じないでしょう。

・私設管使用承諾書について
私設管は私道と同様に他人の所有物ですので勝手に使用することはできません。
そこで私設管の所有者から管の使用を承諾してもらうために、私設管使用承諾書を取得します。
なお、私設管使用承諾書には、私設管の使用だけでなく、分岐も承諾してもらうような書類にするべきです。
なお、公道に埋設されている管を公設管、私道に埋設されている管を私設管だと思っている人がいるようですが、間違いです。
公道に埋設されている私設管もありますし、私道に埋設されている公設管もあります。
安易な思い込みをせず、しっかりと調査しましょう。

・協定書について
協定書は、主に「通路の使用に関する協定書」として作成されます。
通路(建築基準法上の道路ではない道路上の土地)がある場合に、その土地の使用方法等について、使用者で取り決めをしておく必要が生じます。
なお、通路については、所有者と使用者が、必ずしも一致するとは限りません。
調査対象物件が「通路の持分を持たない使用者」であった場合には、特に注意が必要です。

以上が重要事項説明書、売買契約書以外に登場する主な書類です。
ただし、書類の名称には意味がなく、合意書という名称の道路通行掘削等承諾書があっても問題ありませんし、協定書という名称の越境を許容する合意書があっても問題はありません。
大事なのは書類の名称ではなく、内容ですので、それぞれの書類の内容に関しては、慎重に検討して作成する必要があります。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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