不動産会社の経営には次のような難しさがあります。
①商品(不動産)自体が難解
②社員の流動性が高い
①「商品(不動産)自体が難解」という理由により、人を育てることが困難であり、②「社員の流動性が高い」という理由により、せっかく「ある程度」まで育った人間が流出してしまうということです。
社長としては、入社してもらった従業員に一生懸命教育(主に最低限の営業のやり方を教える)をし、「もう少しである程度自分の仕事を任せられる人材に育ちそうだな…」と期待をしはじめたところで、突然辞めてしまう(せっかくいろいろと教育した側(社長)としてはガッカリですよね)。
このように、不動産業界では多くの場合、不動産流通のノウハウというような「情報」は個人に蓄積されてしまい、その個人(社員)の退職と共に、その情報も会社から失われてしまうということが起こりがちです。
そのため、大きく育った社員が退職するということになると、その社員が持っていた知識や経験が一気に失われてしまうということになりますので、会社にとっては大きなダメージになります。
このダメージを回避する方法があります。
それは、知識・経験を会社の資産にするということに、できるだけ早い段階(創業当初)から取り組んでおくということです。
具体的には、社長の今までの営業での経験や、日々営業担当者が持ってくる情報やノウハウを会社のルールとしてまとめておくということをやっておきます。
どこにまとめておくかは、それぞれの会社で、やりやすい方法があるでしょうから、それぞれの会社に合った方法で構いませんが、特に決まったやり方がないのであればエクセルで良いと思います。
なお、情報やノウハウの種類ですが、一般的な書籍に記載されているような情報まで貯めておく必要はないです(その程度の情報であればGoogleで検索した方が早い)。
そこに貯めておく情報とは、次のようなもをいいます。
①法令違反ではないけれど、社内ルールとして禁止するもの。
②過去に起こった事例の中でも、珍しいもの(年に数回しか発生しないようなもの)。
③Google検索すれば出てくるような類の情報ではあるが、会社として絶対に忘れてはならないもの(過去に起こったトラブル等)。
これらの情報を一か所にまとめておけば「ある程度知識や経験がある社員」が退職したとしても、社員退職によるダメージは最小限に抑えられますし、この情報は新人教育にも使えるので、とても便利です。
ただし、このシートを適切に作成するには、「ある程度のレベルの実務能力」が必要になります。
もし、仮にこの「情報」の重要性を理解していない社員にこの作業を任せるようなことがあると、いい加減に作成してしまうか、次第にやらなくなるでしょう。
そのような情報では、結局「いずれ誰も見なくなる(誰も更新しなくなる)」ので、初めから取り組まない方がマシです。
ですから、初めは社長自身がやるか、社長の右腕ともいうべき幹部候補の社員が担当すべきです(その後もある程度のレベルの社員に担当させる)。
この「情報を会社の資産にする取り組み」をどの段階でやるか、又はやらないかで会社の成長スピードは、断然違ってくるはずです。
運用していくのは面倒ですが、会社の資産になるものですので、是非とも取り組んでほしいと思います。