「仕事が楽しい」という発言とか、
「仕事が楽しいですか?」という質問とか、
「楽しく仕事がしたい」という目標とか、
本当に的外れだなと、私自身は思っています。
かくいう私も、「仕事が楽しかった時代」がなかったわけではありません。
でも思い返してみると「仕事が楽しかった時代」というのは、次のような条件が揃っていたときだったように思えるのです。
・自分の知識・経験等が未熟で、学ぶ知識のほとんどが新鮮
・自分の仕事の失敗は上司や先輩がフォローしてくれる
・仕事ができなくても食べていける(毎月給料をもらえる身分である)
つまり前提として「サラリーマン」であること。
また、サラリーマンの中でも「管理職でもないサラリーマン」の時代くらいだったように思えます。
これが、たとえサラリーマンであったとしても、常に成果を求められるようになってくると、仕事に対するストレスは増し、なかなか仕事を楽しめるという状況ではなくなります。
私自身の例でお話しさせていただきます。
初めて不動産業界に入ってきたときは、すべてが新鮮で、学ぶことが多く、自分自身の知識・経験がどんどん増えていきますので(それだけ「何も知らない」ということなのですが…)、仕事が楽しかった時代がありました。
ですが、しばらくして管理職になりました。
その後、サラリーマンとしては最終的に売上100億円超の不動産会社の調査・契約部署のトップになり、部下も常時20名前後いるという状況になったわけですが、そのころになると「仕事が楽しい」などとは到底言えるような状況ではありませんでした。
自らを「不動産オタク」と称する私でもこのような状況です。
ちなみに、そのころに「仕事が楽しい」などと言っている部下がいたら、「何を甘いことを言っているんだろう…」と思っていたかもしれません(幸いそのようなことをいう人間は言いませんでしたが…)。
これが「専門性を身に付け、高い価値を求められるようになった人間の本音」ではないかと思います。
ですから、もし「仕事が楽しい」と言っている人がいたら、「あなたの仕事はまだまだ責任が軽く、その分だけ提供できている価値が低いから、もう少し頑張った方が良い」というアドバイスができます。
また、「仕事が楽しいですが?」という質問をする人がいたとしたら、「昔は楽しかったこともありましたよ。でもプロになっていくにしたがって責任(提供しなければならない価値)が重くなるので、どんどん苦しくなってきましたね。」と答えます。
また、「楽しく仕事がしたい」という人がいた場合は「できるだけプロ化せず、提供できる価値を低く抑える(できればアルバイト程度の仕事にする)ことを考えた方が良い」と答えます。
そもそも「仕事が楽しい」というのは、それだけ未熟であるということの裏返しだということです。
これはおそらくどのような業種の仕事であったとしても「高い価値を求められ続ける専門職(経営者・技術者等を含む)の方」であれば、共通しているのではないでしょうか。
ただし、最後にこれだけは言っておきます。
「私は、もはや仕事を楽しいと感じることはなくなってしまいましたが、現在の仕事が本当に好きであり、これからも人生をかけてこの分野の業務を極めたいと思っています。そして、私の専門知識を必要としてくれる、ともに成長していけるような素晴らしい人たちのお役に立ち続けられる人間でありたいと心底願っています。」
結局「仕事は楽しくないけど、好きだ」ということでしょうか。少し複雑ですね…。