不動産調査を行うことはタイヘンです。
不動産物件調査をしっかりと行うためには、次の能力が高度に備わっている人である必要があります。
①不動産や法律に関する「知識」
②多くの物件を見てきたという「経験」
③一日中外を駆け回ったり、穴を掘ったりする「体力」
上記の要件をできるだけ高いレベルで維持するために、常に「勉強」は欠かせませんし、「体を鍛えること(運動)」もできるだけやっておいた方が良いでしょう。
更に、調査担当者にとって最も重要だと思えるのがあります。
それは、
④しっかりと最後までやり抜こうとする「マインド」
です。
①から③までの要件はそろっていても、④のマインドがしっかりしていないと、不動産物件調査担当者としては中途半端になります。
このマインドを持っているか否かはとても重要で、①から③については、後からいくらでも身に付けることは可能ですが、マインドについては後から身に付けるといってもなかなか難しいのが現実です。
この「しっかりと最後までやり抜こう」とするマインドを持っているか否かについては、その人がもともと持っている性格的な部分に多分に影響されていると思います。
なので、あとから身に付けるといってもなかなか難しい。
なので、①から③までの能力は比較的スムーズに身に付けられたとしても、④の能力がもともと備わっていないために、結果として調査担当者として中途半端な人になってしまうということが起こります。
逆に、①から③までの能力を身に付けるのに多くの時間を要したとしても、もともと④の能力を持っている人であれば、調査担当者としていい仕事をする人材に育つ可能性は高いです。
では、前者(④のマインドを持っていない人)がダメなのかというとそうではありません。
そのような人は、調査担当者としての適性に欠けるというだけですので、他に営業や経営に適正がある人なのかもしれません。
そもそも、①から③の要件を身に付けているわけですから、営業に転身したとしても知識が豊富な営業担当者となれます。
大事なことは、自分の強みを生かせる場所で戦うことです。
なお、不動産調査担当者を育成しているとこのような質問をしてくる人がいます。
「物件調査ってどこまでやればいいんですか?」
なお、この場合の「どこまで」とは、「地中に埋まった杭を探す必要はあるのか」等を言っています。
この質問に対して、いつも私はこう答えています。
「人力でやれる限界まで取り組んでください」
私の発言の意味は「物件調査担当者は、特別な機材を持たずに不動産調査をするわけなので、人力でやれる限りのことはやらなければならない。その結果、更に詳細な調査が必要だと思われる事実が判明したら、それを所有者に知らせ、専門業者による調査をするか否かの判断材料を提供してあげなければならない。」ということです。
つまり「調査記録を形だけ埋めるような調査など無意味」だということです。
もちろん、しょせんは何の機材も持たない人力での調査ですので、どれだけ一生懸命調査をしようと、形ばかりの調査をしようと差が出ないことも多いです。
例えば、物件調査のレベルに10までの段階があり、6以上は特別な機材(地盤調査や土壌汚染等)を要する調査だとします。
形ばかりの調査だとレベル3。一生懸命調査をするとレベル5だとします。どれだけ一生懸命調査をしても、人力ではこの程度の差しかつきません。
一生懸命調査をしてもレベルが2しか変わりませんので、前述の④のマインドができていない人から見れば「ムダな努力」だと思えるのでしょう。
事実、一生懸命調査をしたとしても、レベル6以上のトラブルが物件に潜んでいるときは、人力では見抜くことできないというわけです。
ですが、この「レベル2の差」で防げるトラブルもあるわけです。
その差が出るのは、もしかすると100回に1回かもしれません。
ですが、不動産は関わる人の人生に大きな影響を及ぼす可能性がある重要な資産であることを考えると、100回に1回の差だったとしても、常に全力で取り組まなければなりません。
なお、常に一生懸命調査をして、レベル5の調査をしている人にとっては、レベル5の調査は当たり前のものとなっているため、依頼者の要望によりレベル3の調査をすることも容易です。
ただし、いつもレベル3の調査しかしていない人は、レベル5の調査を命じたところで、なかなか難しいのが現実です。
こうなってしまっては、不動産物件調査の担当者として一流になるのは困難となります。
