不動産業界でも近年コンプライアンスという言葉をよく耳にするようになってきました。
【ちなみにコンプライアンスとは、「法令順守」と訳されますが、法令だけ守っていればいいのかと言われれば、そうではなく、倫理等も含めて守っていく必要があります。】
そもそも不動産業界では、コンプライアンスに対する意識が低い人が多いです。
まだ若く、職業経験もあまりない社員であれば、そもそも守るべき法令を知らなかったりするわけで、コンプライアンスについて意識できないのはまだ分かります（倫理については別ですが）。
ちなみに、不動産業界の人がコンプライアンス意識が低いと感じる主な要因ですが、経営幹部や営業所長等の、会社にとって核となる人たちにコンプライアンスに対する意識が低い（法令等について良く知らない場合も含む）と感じる事が多々あるためです。
私自身、不動産業界の中でコンプライアンスを守ってもらうよう指導している立場の人間なのですが、不動産業界のコンプライアンス意識を向上させようと頑張っていても、一個人としてはとても無力で、孤立無援の戦いを強いられていると感じるときがあります。
そもそも、不動産業界の人間は、コンプライアンスどころか、本業である不動産の勉強すらしない人も多く、長年の経験のみを頼りに仕事をしている人が多数を占めています。
話が少し脱線します。
不動産業界においては、お客様が、不動産の売買は初めてだという方がほとんどです。
したがって、経験だけで不動産の勉強をしない営業担当者でも、不動産取引は素人のお客様よりは、はるかに知識面で勝るため、営業は何とかなるのです。
事実、業界20年超という営業担当者はたくさんいますが、そのような営業担当者であっても、私に質問してくる内容は本当に初歩的な内容であることが多いので、どれだけ長く不動産業界にいたとしても、勉強をしなければほとんど知識量は増えないことが分かります。
このような人たちは、コンプライアンスを守らせようとすると「こんなに厳しいことは、他の会社はどこもやっていない。ウチの仕事の仕方はおかしい。」とか、平気で言ってきたりします。
しかもそれが、支店長クラスの営業幹部だったりします。
私は、その言葉を聞くたびに、「イヤイヤ、他社と言ったってほとんどの地場業者は、不動産や法令についての勉強をしていないところがほとんどだから分かってないんだよ！その低いレベルに合わせてどうするの！」と言ったりしながら、何とか説得していきます。
当然、営業からは嫌われますよね。
まぁ、私の役割は営業に嫌われるくらいでないと仕事をしていることにならないとも思っていますので、気にしないようにしていますが…。
話を元に戻します。
前述の事例は、不動産業界の悪い部分だと思いますが「コンプライアンスなど良く分からない、勉強する気もない」というような人が不動産会社を起業して儲けていたり、社内では営業成績を上げて発言力を高めたりしており、その人たちの多くは宅建士資格すら持っていない人も多いです。
また話が脱線します。
先ほど、宅建士資格「すら」と書きましたが、私は宅建士資格は「不動産業で働くのであれば必須の資格」だと思っています。
お客様の一生を左右するような高額な不動産を取り扱うわけですから、宅建士資格程度の試験は受かっていて当たり前だと思うのです。
宅建士資格を取得して、やっと不動産業界で働くためのスタートラインに立てたと自覚し、そこから日々自己研鑽をしていく必要があります。
なお、宅建試験の知識が実務に役立つのは、実務全体の5％くらいだというのが実感です。
実務の世界は果てしなく広く、この業界でしっかりと価値を提供し続けたいと願うのであれば、一生勉強し続ける覚悟が必要です。
話を元に戻します。
それでも、私はこの不動産業の仕事が好きなので、この業界で働く人の地位の向上を願って、業界内でかかわっていく人たちに対し、コンプライアンスの重要性等について説き続けていこうと思っています。
ちなみに、アメリカでは不動産業界の地位が医師や弁護士と並ぶくらいに高いと聞いたことがあります。
お客様の重要な財産である不動産を取り扱うのですから、当然のような気がしますが、日本では不動産業者の地位はそれほど高くはなく、むしろ胡散臭いとすら思っている方もいます。
その不動産業者の地位をアメリカ並みにするための一助となりたいと思っています。
不動産業界でも、そのうちコンプライアンスを前面に打ち出した会社が作られて、その会社が業界内で目立つくらいしっかり稼いでくれれば、この業界も変わるではないかと本気で思っていますし、私もそのような会社のために頑張りたいと思います。
