現在不動産賃貸仲介業をしている会社で、新たに不動産売買仲介業に進出したい会社もあると思います。
あるいは、勤務経験が賃貸仲介業しかないけれど、売買仲介業で独立開業をしたいという方もいると思います。
今回は、そのようにお考えの経営者(又は独立開業予定者)の方に向けた説明です。
まず、不動産賃貸仲介業と売買仲介業の違いといえば、「不動産という物件」の契約か、「部屋の賃貸という債権」の契約かという違いがあります。
ときどき不動産売買業の世界では、「賃貸は不動産業じゃない」という方がいますが、前述のような違いも関係しているのでしょう。
そのような話はさておき、実務上、売買と賃貸の違いといえば、「物件調査の難しさ」の差になるでしょう。
不動産賃貸には事実上、物件調査という概念はなく、せいぜいハザードマップ等を見て、その物件が存する土地が水害や土砂災害の危険性があるか否か程度の調査しかしないでしょう。
そのため、賃貸仲介の立場では、たいていの場合「貸主(又は管理会社等)に確認さえすれば済む」という感じになるものと思います。
ただし、売買となるそうはいきません。
そもそも不動産を購入する人は、一生に一度するかしないかの決断をするわけですから、賃貸とは本気度が全く違います。
また、引き渡した物件に、買主が想定していないような不具合が出た場合には、大きなトラブルになる可能性が高いです。
売買仲介業者は、買主が予期しないトラブルが発生しないよう調査し、また、どうしてもトラブルを明らかにできない項目については、明らかにできない旨を説明しなければなりません。
そのようにして、物件引き渡し後に、買主に想定外のトラブルが発生しないように説明をする必要があります。
そのために、できるだけ詳細に物件調査を行います。
ですから、まず売買仲介業者は「まず、不動産の物件調査ができなければならない」ということになり、これが賃貸から売買に移行しにくい原因の一つでしょう。
また、重説・売契も、賃貸と売買では記載項目や記載方法が大きく異なります。
したがって、これについても作成方法等の勉強をする必要があります。
ちなみに、重説の作成については、結局「調査した内容をしっかりと書類に落とし込む」という作業となりますので、やはりまずは「しっかりと調査ができること」が重要になります。
なお、事業を行ううえで最も大事な集客ですが、これは賃貸と売買ではそれほど大きな差はないと思います。
また、案内に代表される営業行為ですが、確かに売買特有の質問をお客様からされることはあります。
本来であれば「お客様の全ての質問に答えられる」のが営業としての理想ではあります。
ですが、お客様の質問に全て答えられるという状態になるまでに、何年もの時間を要するのが当たり前です。
そのため、できるだけ普段から勉強をしておくことはもちろんのこと、答えられなかったお客様の質問についても、いちど会社に持ち帰ってから調べて回答をする等により、真摯に対応すれば、大きな問題にはならないでしょう。
問題になるとすれば、たいてい「お客様の質問にテキトーに回答する」ことだったりしますので、その点については気を付けましょう。
賃貸仲介経験者が、売買仲介に進出することは、賃貸仲介のときの「広告手法」と「営業手法」を生かせるという点で、全く何も知らずに不動産業で独立する人よりは、大きなアドバンテージがあります。
なお、不動産賃貸業を営んでいると、アパートの管理を委託していただいている地主さん等から「相続が発生したので、土地を一部処分したい」等の相談をいただくことがあります。
このようなとき、売買のノウハウがない会社では、自社ではどのように処理してよいか分からないため、「信頼できる不動産業者」に、その売買案件の紹介を行うと思います。
その際に、紹介を行った会社に頼んで、「売買の一連の流れややり方」教えてもらうという方法も有効です。
仕事を教えてもらうにも、教える側に何のメリットもない状態で、突然「教えてほしい」と頼んだところで、嫌がられることは間違いはないでしょう。
ですが、「仕事を紹介するので教えてほしい」ということであれば、教える側も気持ちよく教えてくれる可能性が高まるでしょう。
このようにして何件か仕事を教わっていけば、いざ自社で仕事を引き受ける際にも安心できます。
また、賃貸仲介業をしていてもなかなか出会うことのない、司法書士や土地家屋調査士等の専門家についても紹介をしてもらえたりもするでしょう。
ちなみに、売買でも比較的取り組みやすいものとして「新築戸建て」の売買仲介があげられます。
新築は、新しく家を建てた業者がいるため、物件について分からないことがあったとしても、その業者に確認を行えば、たいていのことは分かりますので、安心感が全然違います。
ただし、前述のような理由や、物件の価格の高さから、仲介手数料を稼ぎやすいため、新築を仲介したい業者はたくさんいます。
その分だけ新築戸建ての集客はタイヘンだということは、認識しておかなければなりません。