不動産業で開業するにあたり、資金が潤沢に用意できない方は、日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資制度、又は新規開業資金の制度)を利用することをお勧めします。
不動産業の開業時に創業融資を利用するためには、開業前から融資を見込んで準備をすることが大切です。
不動産業での開業は、飲食店や美容院等の他の業種と比較すると、お金をかけずに開業することが可能ですが、それでも、開業するとなると、運転資金も含めて300万円から500万円程度は必要になります。
また、どのような事業であったとしても開業後は、何かと不測の事態が起き、そのたびにお金が出ていくということが起こります。
そのように不測の事態が発生したときでも、資金が潤沢にあれば精神的に余裕を持てますし、精神的な余裕があれば、いい施策を思いつくことができます。
結果として、危機をスムーズに乗り切ることができます。
ちなみに、繰り返しになりますが、失敗をするときというのは、多くの場合、余裕がないとき(お金に限らずですが…)ですので、あらかじめ資金だけは潤沢に持っておくために、日本政策金融公庫の創業融資の利用を積極的に検討すると良いです。
創業融資は、原則として無担保、低金利でお金を借りることができますので、創業時にお金を借りておき、しっかりと返済をしていくことで、金融機関からの信用力を高めることができます。
その点についても開業時に創業融資を利用することの大きなメリットだと思います。
それでは、融資を受けるためのポイントについて説明していきます。
①自己資金があること
お金を借りるためには、借りる側も、ある程度お金を持っている必要があります。
無一文でお金にルーズな人にお金を貸せば、返済してくれなくなることは明白ですので、ある程度お金を持っている人でなければお金を貸せないというのは当然でしょう。
ちなみに「どの程度の預金(自己資金)を持っていればいいのか」ですが、借りたい額の3分の1程度は用意しておきたいところです。
借りたい額の3分の1とは、例えば創業時に必要な資金が600万円だとすると、200万円は自己資金で持っておいた方が良いということです。
なお、このお金も単に持っていれば良いというわけではなく、少しずつ貯金してきた履歴が大事になります。
融資担当者も、銀行口座に突然まとまったお金が入金されている通帳を見せられて「ほら、預金あるでしょ。お金貸してください。」と来られたとしても、「本当にこの人のお金なのだろうか…?親や友人から借りたのでは?」と疑いたくなる気持ちもわかるでしょう。
したがって、預金は将来の開業を見越して、開業資金預金用の口座に「今すぐ(今月から)」コツコツと入金していくことをお勧めします。
②事業の経験があること
事業を始めるわけですから、その事業の成功可能性が高くなければお金を借りることはできません。
融資した資金が回収できなくなってしまいますので、金融機関もわざわざ倒産すると分かっている人(事業)に融資などしません。
そのため、融資を受けるためには、創業者の「創業する事業における経験」が大事だということになります。
なお、経験は多ければ多いほど良いというわけでもなく、例えば、不動産業界歴25年にもかかわらず、ずっと平社員で、しかも職場を転々としているような人だと、金融機関の担当者も少し厳し目に、見ざるを得ないでしょう。
また、不動産売買仲介の会社で起業する予定であるにもかかわらず、今までの職業経験が、ずっと不動産賃貸仲介だというパターンの場合は、その事業における経験について厳しい判断がくだされる可能性が高まります。
業務における経験については、だいたい6年から7年以上あり、かつ、所属する会社で、管理職になっている等、それなりにキャリアを築いていれば、問題になることは少ないものと思われます。
なお、多少経験が少なかったとしても、将来の開業を見越して見込客を集めていたり、開業に向けて積極的な行動が見られれば、さらにプラスに働くでしょう。
③創業計画が立てられていること
創業融資では、創業計画書の作成が求められます。
計画書作成のポイントは、ズバリお金の流れをしっかりと把握することにあります。
不動産会社で社長になる人も、独立をして経営者になるわけですから、創業計画書を通じてお金の流れをしっかりと把握することは、いいトレーニングになるでしょう。
なお、これは特に売買仲介の経験者に多いのですが、売買は賃貸と比べて契約ごとに仲介手数料をたくさん稼げるため、ドンブリ勘定になりがちです。
この創業計画書を通じて、自分が「いくら借りる必要があるのか」を細かく把握していきましょう。
なお、ときどき「借りられるだけ借りたい」という人がいますが、これもダメです。
しっかりと「いくら借りる必要があるのか」を根拠を持って融資担当者に説明できるようにしておくために、この創業計画書を活用するようにしましょう。
計画を立てる際のポイントは、「売上は、自分が考えている額の半分程度」で考え、「経費は自分が考えている額の倍かかる」と考えておくと、開業後に資金的なピンチを招く可能性を減らせます。
④面談にしっかりと応じられること
創業融資は、融資担当者による「創業者との面談」が求められます。
ときどき「(宅建業未経験の)妻を社長にして、事実上の実務は不動産業界経験者の夫がやる」という方がいますが、融資の場合は創業者本人の面談がありますので、妻が宅建業未経験では、この面談を乗り切ることはできないでしょう。
面談の内容は主に事業に関することですので、未経験者では融資担当者の質問に答えられるわけがありません。
当然融資担当者は、不動産業者に対する融資などたくさん経験していますので、どのような流れで事業を行っていくのかは把握しています。
ウソをついて融資を受けるようなマネは絶対にやめましょう。
⑤納税がしっかりとなされていること
これは、念のために付け加えておくものですが、税金の滞納がある場合、融資を受けることはできません。
したがって、税金を滞納してしまっている人は、しっかりと納税をしておくようにしましょう。
これからたくさん稼いで、たくさん納税をしていく経営者(候補)が、税金を滞納しているようでは困ります。
もし滞納してしまっているような場合は、これを機にしっかりと納税をするようにしましょう。
以上が、日本政策金融公庫の創業融資を利用する場合のポイントとなります。