不動産業界での人材育成は何が難しいのか

不動産業界は、人がよく流動します。

そのため、せっかく新しく社員を採用したものの、すぐに退社してしまうということを繰り返している会社も多いです。

そのような会社では、そもそも人が定着しないので、「育成どころではない」という状況かもしれません。

ですが、いろいろな不動産会社を見て思うのは、社員が入退社を繰り返してしまうから「育成どころではない」のではなく、「育成しないから」入退社を繰り返してしまうという部分もありそうです。

また、人材育成ですが、いろいろな不動産会社の社長と話しをしていても、結局、社長自身もどのように社員に育ってほしいのかが明確ではないというパターンが多いです。

ちなみに、社長自身が、社員の育成について明確にできていないと、次のような問題が起こります

①採用の広告がブレる。
②採用後に教育する人がいない。
③社員の意図しないタイミングで怒られる。

①「採用の広告がブレる」について

結局、社長自身が「どのような人に入社してもらって、どのように仕事を覚えてもらって、どのような社員に育ってもらいたいのか」のビジョンがなければ、どこにでもあるような採用広告となってしまいます(だいたい、歩合がどうとか、休日がどうとか)。

その状態の広告では、採用活動そのものが博打のようになってしまいます。

偶然にもいい人(社長が何となくいいと思える人)が採用できた場合はラッキーですが、多くの場合はハズレとなるでしょう。
社員を採用したものの、すぐに退社してしまう状況というのは、博打に負けている状況だとも言えると思います。

②「採用後に教育する人がいない」について

不動産会社は、少人数で経営している会社が多いため、育成に人を割けないという会社も多いですが、そのこと自体が大きな問題とはなりません。

採用において大事なことは、新入社員にしっかりと「育成のプランを示せること」です。

そのためには、「社長や育成担当者が忙しくて面倒を見られないとき」や、「新入社員の空き時間」には、どんどん読み進めておいてもらうための「課題図書」を用意し、(ある意味)勝手に育ってもらう状況を作るのも有効な方法です。

ときどき、採用したのはいいものの「ろくに教育もしないまま放置をしてしまう」という状況に陥る会社がありますが、放置が一番よくありません。

新入社員も暇になるといろいろなこと(退職も含む)を考え始めます。
そのため、社長や育成担当者も、しっかりと新入社員と向き合う時間は取れなかったとしても、「課題を与えて」「夜(社員が返った後にでも)結果に目を通し」「翌朝にでもフィードバックをする」程度の努力は必要でしょう。

③「社員の意図しないタイミングで怒られる」について

入社後、新入社員としては、さんざん放置されたうえ、自分の意図していないタイミングで、突然社長からキレられる。
このようなことはよくあることですが、これでは退職に向かって一直線です。
なぜこのようなことがおこるのか。
それは、社長が「社員にどのような行動をとってほしいのか」や「どのように育ってほしいのか」についての言語化ができていないからです。
それでは、社員は、なぜ自分がおこられたのか、理由もわかりません。

ですから、社長としては、少なくとも「どのような行動をとってほしいのか」「どのように育ってほしいのか」についての言語化をしておきましょう。
そうすれば、社員はそれを読むだけで「自分がおこられた理由くらいはわかる」ので、納得はできると思います。

まとめますと、ポイントとしては、次のとおりです。

①「どのような行動をとってほしいのか」について記載した資料を作っておく(A4用紙1枚)。
②「どのように育ってほしいのか」について記載した資料を作っておく(A4用紙1枚)。
③課題図書を用意しておく。
④何らかの形で、課題を提出させる。
⑤夜中でも良いので提出された課題をチェックし、翌朝にでもフィードバックする。

ちなみに、「社員が自分で学んでほしい」という社長もよくいますが、自主的に学んでいくような社員は非常に少ないです。
仮に、そのような自主性を備えた社員が採用できたらラッキーでしょう。
ですが、その優秀な社員も、待遇を良くしていかなければ退職されてしまいますので、その点については、よく考える必要があります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

目次