頭が良くて実務を覚えるのも早い、素直に先輩社員のいうことも聞いて、どんどん成長する。
このような社員は貴重です。
社長としても、このような社員はどんどん出世させ、いずれは社長の右腕(経営幹部)にまで成長させたいと思うところでしょう。
ですが、このような優秀な社員にも落とし穴が潜んでいます。
どのような落とし穴かというと、決断が苦手だという人がとても多いということです。
実は、このような「有能さ」を持った人は、「社員(プレイヤー)として有能」なのであって、頻繁に決断を求められる経営者や、経営幹部には向かない人も多く、結果として社長の右腕(経営幹部)になることは難しくなります。
とはいえ、有能であることには変わりはありません。
ですから、このような社員は大事に育てていくと良いでしょう。
うまく育ってくれれば、社長の右腕「の右腕」のようなポジションになることができます。
役職でいえば「課長」といったところでしょうか。
また、このような社員は「実務をよく理解している」ため、後輩社員を育てるのも上手であることが多いです。
では、このような「決断ができない人」と「決断ができる人」には、どのような差があるのでしょうか。
ちなみに「決断ができる」といっても、「実務のことを何にも分かっていないのにテキトーに決めてしまう」ようでは困るわけです(そのようなレベルの人であれば、世の中にたくさんいます)。
したがって、決断ができる人の定義としては「有能」であり、かつ、「決断ができる人」ということになりますが、その決断ができる人というのは、かつてたくさん決断をしてきた人であることが多いです。
そして、決断経験が多い人というと、代表的なのはやはり「経営者」ということになります。
ですが、単に経営者といっても、大企業のオーナー社長から、個人事業主レベルの人までさまざまですが、ここで私が述べている経営者というのは、個人事業主から社員数名程度の規模の経営者を指しています。
従業員の中には、過去に経営者として自分で事業を営んでいながら、現在は従業員として仕事をしている人もいます。
そのような人は、今まで従業員としてしか仕事をしたことがない人よりも、決断力があるという人が多いです。
ですが、かつて経営者として仕事をしていた人が全員有能かというと、そういうわけではありません。
何らかの理由により現在は経営者を辞めているわけですし、成功している経営者だって、全てがその経営者の能力で成功したわけではなく、たまたま「いい人材(社長の右腕)に恵まれた」ということも多いです。
また、「元」経営者であるがゆえに、使いづらくなってしまうということも起こり得ます。
これは私の今までの経験上の感覚値ですが、「有能だけど、決断力がない」というような「サラリーマンとしては優秀な人」は、社員10名に対し1名程度の割合の人だと思います。
そして、「決断力があり、かつ、有能」だという「将来の経営幹部(社長の右腕)候補」は、社員20~30名に対して1名というような印象です。
当然のことながら、優秀な人というのは、今の会社を退職したとしても、次に就職する会社をすぐに見つけることができますので、自社に残ってもらうためには、それなりの工夫が必要になります。
それなりの工夫というと「給料?」となりがちですが、実は、必ずしも給料が一番の条件というわけではないことも多いのです。
もちろん給料も大事なのですが、意外に多いのが「やりがい」だとか「成長」といった種類のものです。
「自分が成長すること」に「やりがい」を見出し、結果として「給料」が伴ってくる。
このような形を望んでいる人も多いのです。
したがって、このような人には求人でも「稼げる!年収1千万円が〇名!」のようなアピールではなく、「不動産のプロが直接指導しますので、確実に成長できます!」のようなアピールの方が響いたりすることも多いです。
そして、入社後は放置するようなことはせず、しっかりと目に見える形で成長のためのカリキュラムを提示し、それに基づいて教育を行っていく。
このようにすれば、数年後には「有能だけど、決断力にかける人」は「立派な課長」になってくれるでしょうし、「有能であり、かつ、決断力がある人」は「社長の右腕」として活躍する存在になってくれる確率は格段にアップします。