経営は経営、営業は営業、調査は調査に専念すべき理由

不動産業というのは、おもしろい業界で、不動産会社は全国に12万社以上あり、そのうち95%が社員10名以下の会社ということらしいです。

そのような業界ですから、一人で何役もの専門業務を掛け持ちしている人がたくさんいます。

不動産業界における専門業務とは、例えば次のようなものをいいます。

①経営
②営業
③調査・契約

なお、経理等も専門業務ですが、会社が小さなうちは、社長が税理士とやり取りする等して処理してしまうと思いますので、①の経営に含めて良いとでしょう。
また、集客は最も大事な専門業務の一つですが、これも会社が小さなうちは社長が率先してやるべきですので、①の経営に含めて良いです。

ということで、小さな不動産会社での専門業務は、上記の3つが主なものになりますが、この3つ業務を社長が全て担っていること、また、イチ従業員でも②の営業と、③の調査・契約業務を掛け持ちしているケースが多いということに驚かされます。

これらの業務を掛け持ちしている方が気付いているのかどうかは分かりませんが、これらの業務を掛け持ちできるというのは、非常に高い能力が要求されます。

ちなみに、上記の①から③までの業務を掛け持ちしているパターンで良くあるのが「士業」です。

士業も個人事業主から補助者数名までの間(ほとんどの士業がこの形態)は、資格者である所長が「経営、集客、営業、業務受注、実務処理、納税」までの全ての業務を同時並行的に処理していきます。

ですが、士業の方は少なくとも「難しい資格試験に受かっている」という点で不動産業界のイチ従業員とは明確な差があります。

確かに、難しい資格試験に受かっているからといって、仕事ができるということにはなりませんし、不動産会社の営業担当者でも非常に仕事ができる優秀な方はたくさんいます。

ですが、少なくとも難しい資格試験に受かるだけの能力があるという時点で、不動産営業マンと士業では、士業の方の方が優秀である確率は高いでしょう。

その士業の働き方と、小規模不動産会社の従業員の働き方がほぼ同じだと考えれば、この働き方の難易度の高さは理解できると思います。

確かに、独立前に営業をバリバリ処理した後に独立した社長であれば、会社員時代に訓練されていますので、士業と同様の働き方も可能かもしれません。

ですが、宅建士資格すら持っていない、不動産のことも良く分かっていないようなイチ従業員では「ほぼ不可能」だと考えて間違いありません。

初めて業界に入ってきて、まだ不動産のことも良く分かっていないような「イチ従業員」に、士業と同じ働き方を要求しても、ついてこられずに辞めてしまう人が続出することは明白なのです。

ですから、社長としてやるべきことは、会社設立後、できるだけ早い段階から、社長自身の仕事のうち「経営(経理・集客)」と「営業」と「調査・契約」に分け、自分の仕事を「経営(経理・集客)」に専念することです。

そして、従業員には、採用当初の段階から「営業」のみに専念させ、「調査・契約」については、営業にはやらせないと考えた方が、従業員の能力を十分に活用することができます。

なお、調査・契約については、初めのうちは社長自身が担当し、営業が3名を超えたあたりから、調査・契約に適性がありそうな者を育てていくと良いでしょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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