宅建業(不動産業)と兼業したい場合はどうすれば良いか

独立して新たに宅建業(不動産業)を始める人がいる一方で、すでに何らかの事業をしている方が、既存の事業に追加して宅建業を始めるという方もいます。

そこで今回は、どのようにすれば宅建業(不動産業)との兼業が可能になるかについて説明していきます。

不動産業を始めるには、宅建業の免許を取得する必要があります。

宅建業の免許の取得において、ポイントになる点は、次のとおりです。

①事務所
②代表者の常勤
③専任の宅地建物取引士の常勤

①事務所について

宅建業の免許を受けるための重要な要件の中に、必ず「事務所」を用意しなければならないという規定があります。
すでに何らかの事業を行っている方であっても、不動産業との兼業をするのであれば、この要件を満たす必要があります。
なお、現在不動産業以外の事業を行っている会社が、建築設計事務所や建設業等のオフィスがある場合は、不動産業を行うために新たに事務所を用意する必要はありません。

ただし、もし現在行っている事業が小売業や飲食業のような業務で、宅建免許取得のための要件を満たす事務所がない状況の場合、現状のままでは宅建免許を取得することができません。

その場合には、新たに事務所を用意するか、今ある店舗等とは別の入口を設けて、新たに事務所を設置する等により対処をする必要が生じます。

②代表者の常勤について

不動産会社においては、代表者は原則として事務所に常勤していることが求められます。
そのため、その代表者が、既存業務が忙しい等の理由により常勤ができない場合は、自らが代表者となって不動産会社を兼業することができず、その場合次の方法により対応をする必要が生じます。

(1)政令使用人の設置により対応

不動産会社の代表者の代理人のような立場の者を政令使用人といいますが、この者を設置することにより、代表者の常勤に関する要件を満たすことができます。

(2)非常勤証明書の作成により対応

既存の仕事が他社の「非常勤の役員」である場合には、「非常勤証明書」の発行を受けることで、宅建免許の代表者の常勤の要件を満たすことができます。

③専任の宅地建物取引士の常勤について

不動産業を始めるには、従業員5人に1人の割合で「専任の宅地建物取引士」を設置する必要があります。

ちなみに、話しが少し逸れますが、従業員5人というのは、不動産業に従事する従業員が5人という意味であり、もし仮に不動産業とは何の関係もない既存の事業で30人の社員がいたとしても、不動産業に従事する従業員が5人であれば、専任の取引士は1名で良いということになります。
なお、不動産業に従事する者の数には、代表者や不動産業に関わる社員、専任の取引士は必ずカウントされます。
また、不動産業の場合、代表者は常勤を求められる関係で、代表者が他の会社の代表者を兼ねたり、他の会社の常勤の取締役等であった場合には、その者を不動産業の代表者として宅建免許を取得することはできません。
その場合には、他の者を代表者の代理人(政令使用人)として、宅建業の免許を取得する必要が生じます。
話しを元に戻します。

専任の取引士ですが、原則として「兼業が認められていません。」

したがって、新たに不動産業を開始しようとする方が、既存の事業で「ガッツリ働いているような人」である場合、その人を専任の取引士として宅建免許を取得することはできません。

では、「ガッツリ働いていない人」というのはどのような人なのか。
それは、例えば「非常勤の取締役」であったり、「会社の出資者で実務に従事していない人」等が想定されます。

もし仮に、専任の取引士が、他社の非常勤の取締役の場合は、非常勤証明書の発行を受けることにより、免許の要件を満たすことができるということは、代表者の場合と同様です。

また、行政書士・土地家屋調査士等の士業の場合、その士業における法令により、兼任が認められない場合もあり、その場合、兼任は不可となります。

ちなみに、政令使用人と専任の取引士は兼ねることができます。
そのため、兼業をしたい場合には、信頼できる「宅地建物取引士」に「政令使用人」と「専任の取引士」の両方を兼任してもらい、宅建免許を取得するのが最も一般的な方法となります。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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