相手に話を伝えるには、話すぎないことも大事

私は、不動産会社の運営に関する手続きや、不動産流通に関する知識を商品としています。

そのため、このあたりの勉強は、自分にとっての商品開発ですので、日常的に行っており、その分だけ知識は豊富に持っています。

ですが、これがときどき裏目に出て、問題が発生するときがあります。

どのような問題かといいますと、相談を受けたときに「情報を与えすぎて、結局相手を混乱させてしまう」というものです。

例えば、このような感じです。

お客様「ちょっと質問なのですが、当社が仕入れようとしている物件で、〇〇という問題があるのですが、どのように対処すれば良いと思いますか?」

私「(資料を見ながら)どれどれ、なるほど。この物件の場合、△△について気をつけながら、調査を進めていくべきでしょうね。ちなみに、このような物件の場合、□□という問題が発生することもときどきあって、そのときは、××という方法を取らなければならない場合もあります。また、私が過去に調査した物件の中に、〇△という問題が発生したことがありますので、もし、〇△の問題が発生しそうでしたら…」

このような感じで話を進めてしまい、お客様は「結局どうすれば良いの?」というような感じになってしまうときがあるのです。

これは大失敗ですよね。

ですから、結局私は、「と、いろいろなトラブルが発生する可能性がありますので、まずは△△に気をつけながら調査を進め、もし何か気になることがあれば、再度ご連絡をいただいてもよろしいでしょうか。」というように、言い直したりします。

私にとっては、できるだけお客様に正確な情報をお伝えしたいと、あらゆるトラブルを想定して、親切心で話しているつもりなのですが、結局はお客様を混乱させるだけとなっているのです。

ちなみに、不動産会社でもこのようなことは、営業の場面でよくおこります。

不動産会社に訪れる多くの方は、不動産の購入が初めてであり、人生で一度しか不動産の取引の当事者になりません。

そのため、日々不動産の仲介をしている営業担当者と、物件の購入者との間には、大きな知識量の差があるのです。

だからこそ、不動産の説明をする際も、伝える情報が多すぎると購入者に全く伝わらないのです。

また、これが皮肉なことなのですが、誠実でよく勉強をする営業担当者ほど「購入者に正確な情報を伝えようと思う」あまり、情報を与えすぎてしまうということが起こります。

それにより、購入者は「よく分からない」という状態になってしまい、最悪なことに「良く分からなので買わない(怖くて買えない)」という結論になることも多いのです。

そして、これまた最悪のケースとして、先ほどの購入者が「どうしても、先ほど検討した物件が欲しい」と、今度は別の不動産会社を訪れ、そこにいた普段からロクに勉強もしていない営業担当者から、次のようなことを言われたりします。

「まぁ、新築だから大丈夫っすよ!」

「それも、そうか」と購入者は納得して、この営業マンから購入を決めたりするのです。

これは、本当に悲しいことですよね。

購入者をトラブルに巻き込まないようにと、普段から勉強を重ねている営業担当者は、「話しをしすぎてお客様を逃してしまう」、一方で、ロクに勉強もしない営業担当者からの「大丈夫っすよ」に背中を押されて購入を決めてしまう。

購入者も物件が欲しいんですよね。

だから、最後の一押しをしてくれる営業マンを待っているわけです。

当然のことながら、購入者も「普段からよく勉強をしている営業担当者」から物件を購入した方が良いに決まっています。

新築だからといって、購入後に何のトラブルも発生しないということは無いのは、不動産業者であればよく知っていますよね。

ですから、普段からよく勉強をしている営業担当者の方、是非とも話しすぎには注意しましょう。

伝えるにしても、一つずつ、購入者が本当に理解していることを確認しながら、話を進めていくようにしましょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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