不動産業界での従業員への商品(不動産)教育について

不動産業界は規模が小さな会社が多く、小規模の会社の多くは従業員に対する商品(不動産)教育はほとんど行えていないのが現状です。

また、不動産に関する教育(勉強)といっても、範囲が広すぎて何を勉強すれば(させれば)いいのか分からないという人も多いと思います。
また、不動産業界で営業をしていれば、特別に勉強などしなくても勝手に知識は身についていくと思っている人もいるかもしれません(当然、そんなに甘いものではありません)。

さらに、「ウチは従業員教育をやっている」という会社であっても、せいぜい先輩営業担当の物件確認や、案内に同行させるくらいのもので、「不動産の話」というよりは、「営業の話」になってしまうことが多いのではないでしょうか。
なお、これでもやらないよりかはマシですし、営業担当者として採用しているわけですから、営業の訓練が必須なのは当然です。

そのような業界ですので、業界歴10年超でも素人に毛が生えたような営業担当者(なんちゃってプロ)が量産されるわけです。

確かに、不動産を購入するお客様の多くは、一生に一度しか不動産を購入しませんので、お客様よりも「なんちゃってプロ」の方が不動産の知識量で勝っているため、これまでは不動産業界内では、問題なく生きていけたわけです。

ただし、このなんちゃってプロにとって天国だった時代も少しずつ変わってきています。

そもそも不動産業界のお客様は、家の程度にもよりますが「住宅を購入できるくらいに、それなりに社会的信用がある人」ですので、不動産業界歴10年超にも関わらず、なんちゃってプロ程度にしかなれていないような人とは比べものにならないくらい優秀だったりするわけです。

そのため、現在のお客様は、商談中の営業担当者の何気ない一言(お客様の質問に対する曖昧な回答)に納得せず、商談後、自分でインターネットで調べたりします(場合によっては、その後、連絡が取れなくなる)。

だからと言って、なんちゃってプロは、今さら勉強などしません(…と言うか、できません)。

ですから、これからの不動産会社の社長は、このような「なんちゃってプロ」をうまく利用(消費)しながら、自社で優秀な人材を育てていく覚悟が必要となるでしょう。

話は変わりますが、私自身もこの不動産業界に入って丸三年がたったころから、不動産業の仕事って「士業の仕事にとても近い」と感じるようになりました。

これは、「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」になったから、というようなことをいいたいわけではなく、資格の名称が変わるずっと前から、不動産業の仕事は、不動産のプロとしてその専門性を高めていくと、士業の仕事にどんどん近づいていくという意味です。

そういうわけで、士業の仕事よりは格段に入りやすい不動産業界でも「士業のように専門性を高めて仕事ができる」と、新人に教育することで、モチベーションを上げて大きく成長する人も現れてくるのではないでしょうか(そうはならない人の方が多いのは当然の話で、10人に1人くらい大きく成長してくれる人がいればラッキーだという程度です)。

なお、宅地建物取引士を、弁護士を中心とするその他の士業と同格の専門家として扱うのであれば、不動産流通の現場で生きていくには一生勉強が欠かせないということが、すんなりと理解できるのではないでしょうか。

ただし、この記事の初めでもいいましたが、本来は単なるサラリーマンに過ぎない新人の営業担当者に、単に「不動産の勉強をしろ」といってもムリです。

ですから、推薦図書のような形で、10~20冊程度の本を会社に用意しておくといいと思います。

それらの本は「必読(空き時間を見つけて自習)」として貸し出しをし、もし自分でも買いたいという社員が現れたら、書籍の購入費を補助してあげる等の福利厚生制度を用意してあげれば良いと思います。

まず会社で始めることは、書籍を選定して購入することと、従業員の意識を変えることだけです。
これらをやるだけで、将来的に社長の右腕となってくれるような優秀な従業員が育ってくれる確率は格段に上がると思いますので、やらない手はありません。

ちょっとしたきっかけを与えるだけで化ける人は一定数いるものです。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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