現地調査について

現地調査の手順について説明していきます。
ここでは、イメージしやすくするために、次のような物件を想定して説明していきます。
・整形地(概ね四角形)
・地積は約30坪
・木造2階建て(築年数30年)

①あらかじめ調査対象地の所有者の承諾を得た日に、現地に向かう。
調査対象地が空家の場合、勝手に入って調査を開始してしまう人がいるようですが、絶対に連絡はしなければいけません。
物件調査中に所有者が偶然現れて、連絡もなく勝手に入って調査をしていたことに所有者が怒り、契約が無くなった例を知っています(「勝手に人の家の敷地に入るような業者とは、取引したくない」とのことで…。当然ですよね)。

②調査対象地の近隣を少し歩き、物件の周辺の状況等を確認する。
ただ漫然と歩き回るだけではなく、次のようなことに気を付けながら歩きます。なお、デジカメとコンベックスは持っていきましょう。

・道路の種類を予測する(建築基準法第42条第1項第〇号の道路か等)。
・道路に一部セットバックしているような痕跡が見られる場合は、参考までにその部分のセットバックの幅を計測する。
・接面道路のマンホール等を見て、公共下水道敷設の有無等を予測する(必要であればデジカメで撮影していきます)。
・接面道路に電柱間電線があるか(電柱間電線がない場合、隣接地等の敷地上空を通過(越境)して対象物件に引込まれているのかも)。
・近隣に怪しい雰囲気の家はないか。

なお、物件の周囲を歩き回る際ですが、あまりキョロキョロしていると怪しい人間だと思われますので気を付けましょう。

③調査を開始する。
(1)境界標を探す。
①と②を経てから、初めて対象物件の調査を開始します。
まずは、境界標を探していきます。
初めから露出している境界標は良いのですが、地中に埋まっているものも多いので、地積測量図や現地の状況等からあたりをつけて探していきます。

(2)調査対象地の敷地を計測する。
境界標を探し出したら(探し出せなかった場合は、境界点だと思われる場所を決めて)計測を開始します。
計測はあらかじめ自分で決めた順番で、機械的に行っていきます(ここは正確性を大事にしつつも、スピードにもこだわります)。
ちなみに私が計測を行う場合の順番は次のとおりです(調査の目的に応じて、省略する項目もあります)。
・道路幅員(接面道路:最低3か所)
・接道間口
・敷地の周囲の辺長
・対象物件と隣接地との高低差
・建物の外壁と土地の境界線のうち、狭いところの幅
・建物の辺長(1階部分)

(3)排水を確認する。
汚水、雑排水、雨水が、どのように排水されているかを全ての桝を開けて確認していきます。
桝を開けるために、バールやマイナスドライバーを使用します。
全ての桝を開けた後に、ポリタンクに入れてきた水を桝に流して経路や放流先を確認します。
また、隣接地方向から対象物件の桝に接続されている管(被越境)がないかや、逆に対象物件から隣接地方向に伸びている管(越境)がないかを確認します。

(4)調査対象物件の「問題点」や「気になる部分」を調査記録に記載していく。
問題点や気になる部分とは、具体的には次のとおりです。
・越境物の有無(地下越境、地上越境)。
下ばかりに気を取られますが、必ず上を見上げます。見上げるのを忘れて、上空の送電線を見落とす等ないようにしましょう。
・高低差がある場合は、擁壁に異常(ヒビ、亀裂、はらみ、二段擁壁等)がないか。また、擁壁の種類等にも注意します。
・ブロック塀がある場合は、法令に適合しているかや、劣化、傾き、ぐらつき等がないか。
・浄化槽の有無。なお、公共下水道に接続されている場合は、浄化槽の埋戻し跡等はないか。
・建物の外壁や基礎、土間コンクリート等に大きなダメージはないか(地割れ等の疑いがあるかも)。基礎の種類等にも注意。
・建物に蟻害(蟻道)はないか。
・その他、調査対象物件内に、用途不明の物はないか(分からないものを、分からないままにしないことが大事です)。

(5)物件の写真撮影をする。
問題点を確認し尽くしたら、最後に写真撮影をしていきます。
写真撮影もあらかじめ自分で決めた順番で、機械的に撮影をしていきます。
写真撮影の方法については、また別の機会に説明します。

(6)現地調査で計測した数値と、地積測量図や建物図面・各階平面図の数値を比べる。
地積測量図と現地に大きなズレはないか。
地積測量図に辺長の記載がない場合は、地積測量図と現地との比較ができませんので、敷地が「四角形(又は台形等の分かりやすい形)」の場合、四角形としてだいたいの面積を算出し、登記記録記載の地積と大きなズレがないかを確認します(登記記録の地積と実測面積はズレていることも多いので、ざっくりと確認できれば大丈夫です)。
また、建物の2階にも増減築等がなさそうかを確認します。

(7)隣接地等のヒアリングを行う
所有者の承諾が得られている場合、隣接地や自治会長等へのヒアリングを行います。
ヒアリング項目等については、別の機会に説明します。

(8)後片付けをして調査終了
最後にもう一度調査モレがないか、調査記録を見ながら確認します。
調査モレがないことが確認できたら、調査が終わった旨を所有者に連絡をして、役所調査に向かいます。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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