登記記録を見る際の注意事項について

今回は登記記録の確認の際の注意点について説明していきます。

1.表題部について
・所在について
同一の取引対象物件の中でも「所在地」が違うというパターンがあります。
複数の筆がある物件の場合で、登記記録を確認するときは、二筆目からは所在の確認をせず、地番から確認するという人もいると思いますが、全筆で必ず「所在から」確認するようにしましょう。
なお、私の所在の確認方法は、登記記録の確認時に一筆目の登記記録を常に見えるところに置いておき、二筆目以降の筆に関しては、所在の確認を一筆目の登記記録を使って全筆確認していくようにしています(一筆目の所在と、二筆目の所在を確認し、一筆目の所在と、三筆目の所在を確認するという感じです)。

・地目について
地目で一番注意しなければならないのは「田」と「畑」です。
これらの地目のときは、農地法関連の確認が必要になりますので要注意です。
過去に区画整理中の土地で、地目が「田」という物件があり、換地後は「宅地」になるということで農地法の届出は不要だと思っていたのですが、念のため農業委員会に確認したら「届出が必要」だと言われ、慌てて届出をしたことがあります。
いかなるときも油断をせずに確実にやるべきことをやりましょう。
また、地目に工場等の記載がる場合は、土壌汚染等の可能性について考慮する必要があります(過去に調査対象物件上に存していた建物については、住宅地図等でも確認できることがあります)。

・原因及びその日付(登記の日付)について
この欄で、過去に分筆登記を行ったことが確認できない場合は、地積測量図が作成されていません。
また、過去に作成されていたとしてもあまりにも日付が古い(昭和30年代後半)ときは、地積測量図がない場合があります。
なお、国土調査等を行っていた場合には、法務局ではなく役所で図面を取得することになります。

2.権利部(甲区)について
・所有権移転請求権仮登記について
仮登記は、抹消されていることをしっかりと確認しましょう。
仮登記の抹消は、抹消登記を確認することで行います。
私も調査担当者として駆け出しのころ、仮登記が抹消されていないことを見逃した経験がありますので要注意です。

・差押登記について
注意点としては、差押登記を抹消させるための約束を取り付けた上で取引に進みます。

・登記名義人について
登記名義人(売主)の住所、氏名が現在と異なる場合は、現在のものに変更していただく必要があるわけですが、複数の筆の中で、変更済みのものと変更未了のものが存する場合がありますので、表題部の所在を確認したときのような方法で一筆ずつ全筆確認していきましょう。

3.権利部(乙区)について
・抵当権について
抵当権の残額を確認し、売買価格を上回るようであれば、手付金の支払いをしないなどの検討をする必要があります。
不動産業に従事している人の中には「手付金は必ず支払われるもの」だと思い込んでいる人がいるようですが、そんなことはありません。
必要に応じて、支払わない等の選択をすべきです。
なお、共同担保目録も必ず確認しましょう。
共同担保目録を確認することにより、売主自身も見逃していた筆を見つけたことがあります。

・根抵当権について
根抵当権は、現在借入額がなかったとしても、簡単に極度額まで借りることができますので、現在の借入額の残額の確認にはあまり意味がありません。
極度額と物件価格とを比べて手付金の支払い等を判断する必要があります。

・地役権、地上権について
地役権や地上権が付いている場合、その内容をよく確認して、取引を行いましょう。
よくわからないまま契約に進んではいけません。

上記に限らず、登記記録では、ときどき見たこともないような情報に出くわすことがあります。
そのようなときも「大丈夫だろう」と安易に考えず、それが何なのか分かるまでしっかりと確認していきましょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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