お客様は神様です。
と、最初に言ったのがどなたなのかは知りません。
ですが、私自身はお客様が神様だとは思ったことがありません。
そもそも「お客様は神様だ」という言葉は、少し危険だと感じてもいます。
もしも社長が会社でこの言葉をたくさん使用している場合、従業員が「お客様に対して、丁寧になりすぎる傾向が強まる」気がするのです。
ちなみに、私自身は不動産会社の社長を支援するという仕事を主にしていますが、お客様に対してリスペクトはしていますが、神様だとまでは思っていません。
これが、相手が神様だとなると、どんな無理難題も聞かなければいけないような状況になってしまうでしょう。
そのような状況では、いずれ私は廃業をしなければならなくなる状況に陥るかもしれませんし、そうなると、私の提供しているサービスに価値を感じていただいている他のお客様にもご迷惑をおかけすることになってしまいます。
また、私の仕事は、お客様の意見を全て聞き入れるというわけにはいかない側面もあります。
特にお客様が「違法行為」をしようとするような場合です。
そもそも不動産は、法律でがんじがらめであるため、不動産業者も違法だとは知らずに違法行為をしてしまうような場面があります。
それを、お客様がやりたがるからといって、認めるわけにはいかないのです。
ダメなものはダメだと言う。
ここにも私の価値があります。
これが、お客様が神様だと思って仕事をしているような場合だと、ダメだと言えないどころか違法行為に加担してしまうようなことが起きかねません。
実際に違法行為に手を染めてしまう士業がいることも、もしかするとこのような背景があるのかもしれません。
したがって、私は、お客様を神様だと思っておらず、尊敬できるビジネスパートナーのように捉えています。
さて、これを不動産業で考えてみるとどうでしょうか。
不動産業のお客様は神様でしょうか。
やはりそうはならないでしょう。
そもそも不動産業界のお客様には「買えない(借りられない)」という方が一定数発生します。
そのため、通常の仲介業務の場合、初めにお客様の希望を聞き、次にそのお客様が希望の物件を買えるのか(借りられるのか)について、確認しなければなりません。
その時点で、買えない(借りられない)となった場合、その方に「あなたには無理だ」と言わなければならないでしょう。
つまり、何でもかんでもお客様の要望を通せるわけではないのです。
また、不動産仲介の現場では、売主と買主がトラブルにならないよう、中立の立場で仕事をしなければなりません。
当然、どちらかの意見を採用すれば、どちらかに折れていただくという場面が出てくるでしょう。
その際も、不動産業者は、不動産流通の専門家としてしっかりと意見を言わなければなりません。
このように不動産業においても、お客様は神様だと捉えると、あまりうまくはいかないのです。
なお、不動産業の中でも、賃貸仲介で家賃3万円台というような少額のワンルームマンションだけを扱っているような場合は、「お客様は神様です」ができるかもしれません。
ただし、このような方は、家賃の滞納等の問題が発生する確率も高かったりして、私はあまりこの層をお客様としたいとは思えません。
これはあくまでも私の考えですが、私は「クライアントである不動産会社の社長には大いに活躍していただきたい」と思っていますから、どうしてもクライアントには「自分がするペクトできる人」を求めてしまいます。
そのような人は、例外なく「自分は客なんだから…」みたいな態度はとりません。
そもそも「社長自身が頑張らないと、いくら支援しても成功などしない」ので、「自分は客なんだから…」の態度の人では成功などするはずもなく、結果として、私も価値の提供ができないということになります。
結局は「自分は客(神様)なんだから…」の態度の方は、クライアントにはできないということになりますね。