【重説】売主欄の記載方法について

売主の表示と占有に関する事項のうち、「売主欄」の記載について説明します。

この欄には「登記簿記載の所有者と同じ」と「登記簿記載の所有者と異なる」という選択肢があるように、売主が登記記録に記載されている者と一致しているかについて説明していきます。

登記記録と一致している場合は、登記記録の「甲区」に記載されているとおりの住所と名称を、そのまま転記していけば良いので問題はありません。

問題となるのは、売主と登記記録に記載されている者の情報が一致していない場合です。

なお、一致していない理由として多いのは、次の場合です。

①対象物件を転売しようとする宅建業者が、登記名義人との売買契約は済ませているが、所有権移転登記を済ませていない。
②相続が発生しているが、相続登記をしていない。
③売主の住所が変更されているが、変更登記を行っていない。

①対象物件を転売しようとする宅建業者が、登記名義人との売買契約は済ませているが、所有権移転登記を済ませていない
他人の所有物を売買の目的物とすることを他人物売買といい、民法では他人物売買を認めていますが、他人の所有物を売買する場合、売主はその物の所有権を取得して買主に引き渡す義務を負います(ただし、宅建業者は宅建業法により一定の制限があります)。

②相続が発生しているが、相続登記をしていない
相続登記を終えていないというケースは、所有権はすでに売主にあるが、登記だけが済んでいないということですので、他人物の売買というわけではありません。
なお、この場合、遺産分割協議書等の書類を見せてもらうことにより、売主に所有権があることを確認しなければなりません。

③売主の住所が変更されているが、変更登記を行っていない
売主名は登記記録で確認できますので、あとは住所の変更登記をしてもらうだけです。

売主と不動産の所有者が異なる場合は、その理由を確認して、どのように対処するかを特約で定めておきます。
例えば①のケースでは「売主は、本物件引き渡し時までに、売買対象物件の所有権を取得して買主に引き渡す」旨の取り決めをします。
②のケースでは「売主は、本物件引き渡し時までに、相続登記を完了させる」旨の取り決めをします。
③のケースでは「売主から買主への所有権移転登記までに、住所の変更登記を行う」旨の取り決めをしておきます。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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