仕事(不動産業界)において「人を育てる」とは、どういうことなのか

不動産業界で独立する人は、会社員時代に優れた営業成績を残している人が多いです。

そのため、会社員時代は部下を指導する立場(管理職)だった人も多い。

私は、仕事で不動産会社の経営者とお話をさせていただく機会が多いのですが、よく「今年は人を育てたい」とか、「まずは人材育成をしたいですね」というような話を聞きます。

では、不動産業界において「人を育てる」とは、どういうことなのでしょうか。

不動産業界は、仕事で取り扱う対象物が土地や建物という、高額であり、かつ、権利関係が複雑なものを「流通させる」という仕事なわけです。

当然、勉強することは多岐にわたりますので、不動産業界で仕事をしている限りにおいては、一生勉強しつづけなければなりません。

そのような業界ですから、「人を育てる」にも、他の「一般的な業界」と比べてハードルが一つ上がるわけです。

それらを踏まえると、不動産業界における「人を育てる」の要素とは、次のように考えられます。

①知識を向上させる。
②仕事を覚えさせる。
③仕事観を身につけさせる。
④人格を高めさせる。

①知識を向上させるについて

不動産流通というサービスを提供する以上、最低限の知識を身につけておかなければ、お客様に多大な迷惑をかけてしまいます。

そのため、知識を向上させるというのは必須になります。

ただし、高度な知識レベルにまで到達していなければ、仕事をさせてはいけないかというとそんなことはありません。

社内に「それなりに知識を要する人(社長や先輩社員等)」がいれば、たとえ新人営業担当者でも「その人に、いつでも質問ができる体制」さえ整っていれば、大きな問題は生じにくいです。

なお、社長としては、このような社内の体制を作ると同時に、新人営業マンには「自習を促す」ということは必要です。
不動産の素人が、一人前になるために必要となる勉強ですが、まずは「宅建士資格を取得」させれば、資格取得後は、ある程度本人の意思に任せても良いと思います。

ただし、宅建士資格を取得したからといって、それで満足してしまい、それ以上何も勉強もしなくなるのはダメですので、しっかりと自習を促していく必要があります。

②仕事を覚えさせるについて

不動産知識と同様か、それ以上に大事なのは、基礎仕事力を向上させることです。

基礎仕事力とは、一番基本的なところでいえば、「あいさつ、話し方、態度」等から始まり、その後は「報・連・相」ができるようにしていきます。

なお、最低でも「あいさつ、話し方、態度」と「報・連・相」がしっかりできない社員は、お客様と関わらせるようなことがあってはいけません。

そもそも「あいさつ」もまともにできないような人であれば、お客様に失礼でしょう。

また、「報・連・相」ができないようでは、お客様の話の中に重要な内容が含まれていた場合、その内容がスルーされてしまうということが起きかねません。
これではいずれトラブルになることは目に見えています。

最悪、その営業担当者に十分な不動産知識が備わっていなくても、お客様からもたらされた「重要な内容」を、会社に持ち帰り、会社でしっかりと知識がある社長や、先輩社員等に「報告・相談」ができれば良いわけです。

これらのことは、社会人として基本中の基本ですが、この基本がきちんとできるようになった後は、社員の自主性に任せて「営業力の向上なり、英語力の向上なり、IT技術の向上なり」を追加で学習させれば良いと思います。

③仕事観を身につけさせるについて

仕事観というのは、例えば「長時間労働する」とか、「お客様が希望すれば休日出勤も厭わない」とか、「仕事のためなら家族を犠牲にして働く」とか、逆に「家族ファーストで残業も休日出勤もできるだけしない」などの仕事をする際のポリシーのようなものを指しています。

これを私は「仕事観」と呼んでいるわけですが、この仕事観については、持って生まれた性格や、育ってきた環境に大きく左右されるものだと思いますので、入社後に教えるといってもなかなか難しいのが現実です。

ですから、社長としては「できるだけ自分の仕事観に会う人を採用する」しかありません。

そのために社長ができることは、できるだけ採用のときから「自分が求める人物像の明確化」を行っていく必要があります。
この「明確化」をするかしないかで、自分の仕事観に合う人を採用できるかどうかに大きな差が出ることは間違いありません。

④人格を高めさせるについて

「仕事で人格を高めさせる」という考え方もあるのかもしれませんが、その社員が、よほど若い人か、ずば抜けて素直な人でない限り不可能でしょう。
相手の人格を高めさせることなど初めから諦めて、自分の人格を高める努力に注力した方がムダがないです。

なお、人格の話とは異なり、これは知識の話ですが、例えば「コンプライアンス違反になるようなことはしないように、会社としてしっかりと教育」をしなければなりません。

相手の人格面については、覗き見ることは不可能ですので、そこは相手を信じることとし、まずやるべきことは「社長に会う仕事観」を持った人物を採用できるよう努力し、採用できたあとは、しっかりと「仕事に関する知識」や「仕事力」を高めてもらうしかありません。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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