不動産業界というと「ブラック企業が多い」という印象を持っている方も多いと思います。
その認識が正しいのかと言えば、おおむね正しいと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、不動産会社がブラック企業化しやすい理由としては、次の2点があげられます。
①社員10名未満の小規模の会社が多い
②成果主義、実力主義の会社が多い
①社員10名未満の小規模の会社が多いについて
不動産業界は小規模の会社が多いです。
小規模の会社では、労務環境をきちんと整えるというところまでは、なかなか着手できるものではありません。
そのため、大企業で行われているようなホワイト企業化のための施策を取ることはできないのが通常です。
②成果主義、実力主義の会社が多いについて
不動産業界においては、営業が花形の職種であり、数字が全てという会社も多いです。
いまだに営業成績のグラフを事務所に掲げ、営業成績を競わせているという会社も多いでしょう。
そのような会社が多い業界ですので、そもそも自社がブラック企業とか、ホワイト企業とか考えている人自体が少ない印象です。
上記が、不動産業界にブラック企業が多い理由ですが、この流れは少しずつ変わってきていると感じます。
業界が変わってきている原因の一つとしては、従来どおりのブラック企業のままだと、満足に人を採用することができないこと、また、人を採用できたとしても定着させられないという問題が、いたるところで起こっているからでしょう。
そうなると、会社の規模を拡大したい社長としては、自身の会社をホワイト企業に寄せていくしかなくなります。
具体的には、従業員への過度なノルマを撤廃したり、残業をさせないといった取り組みを行う会社も増えてくるでしょう。
ですが、私は、常々疑問に思っていることがあります。
それは、求職者は本当に「ホワイト企業だという理由だけで会社を選ぶのだろうか。」ということです。
当然、「不当に」厳しい扱いをされることを望んでいる人はいません。
ですが、毎日ノー残業で定時に帰らされたり、大事に扱われ過ぎて、責任を伴う仕事を任せてもらえなかったりすることを物足りなく感じている求職者もいるのではないでしょうか。
私は、求職者の中にも一定数は、「しっかりと仕事に取り組みたい。不動産業の仕事をしっかりと身につけたい。」と思っている者がいると感じています。
そのような求職者には、「単なるホワイト企業」では物足りないでしょう。
そのような人のために、求人において「不動産の業務について、しっかりと教育を行う」というコンセプトで他社との差別化ができます。
この求人方法であれば、新入社員は、社員でありながら、ある意味「不動産を学びに来ている者」ともなりますので、入社当初から、他社と張り合って給与を高くする必要もありません。
一方で、初めに給与を抑えていますので、しっかりと頑張ってカリキュラムをクリアした社員については、しっかりと社員の頑張りに応じて給与をアップしてあげることができます。
そのような体制を作れば、社員の定着率も上がるでしょう。
しかも、この方法だと、単に社員の定着率が上がるというものではなく、しっかりとカリキュラムをクリアした、「仕事ができるようになった社員」の定着率を上げることができるというメリットもあります。
なお、この方法で採用活動をする場合は、実際に「教育を施す体制(カリキュラム)」を作らなければなりません。
また、社員には「どのように育って欲しいのか」、「どのように努力をしていけば会社から認められるのか」について、社長の考えを明確に打ち出す必要があります。
これらの考えを資料にし、その資料を使って採用面接時に求職者に説明を行うのです。
そして、最後にこのように言います。
「当社で仕事をすれば、3年後には、他社で10年営業を経験する程度の力がつきます。ですが、当社は厳しいですよ。ついてこられる自信とやる気はありますか?」と。
やる気がある人だけが、YESを答えるでしょう。
その方法で採用をしたとしても、やめてしまう人は出ますが、定着率はアップするはずです。