不動産会社における「法律」の学習方法について

不動産取引を深く理解するためには、法律の学習は欠かせません。
ですが、法律の勉強を苦手とする人も多いです。

今回は、不動産業界における法律の学習方法について説明していきたいと思います。

まず、全ての契約の根底にあるルールは「民法」です。

ですから、不動産業では「民法」の勉強は欠かすことはできません。

民法は、契約行為の基礎になる法律であり、民法の理解が深まれば深まるほど「売買契約書の内容が理解できる」ようになります。
なお、民法の分量は膨大で、勉強していくのは大変ですが、契約業務を続けていく限り必ず使いますので、少しずつでも勉強していくようにしていきましょう。

以前、ある不動産会社の契約の担当者と話をしているときに、法律の学習の話になりました。
その際に私は「民法の勉強は常にしている」という趣旨の話をしたところ、「なぜ民法の勉強をしているのですか?」という質問が来たので、一瞬その質問の意図が分からずに返答に窮してしまいました。

どうやら、その契約担当者は、普段から法律の勉強などしておらず、契約も「(なんとなく)いつもこのように契約をしており、何か問題が起きているわけではないから、大丈夫だろう」という「感覚」だけで仕事をしていたようです。

その会社は、その担当者が重説・売契をほぼ一人で処理しているとのことでしたので、その会社の契約のレベルが伺い知れました(同時に「法改正等の対応はできているのだろうか」と少し心配になりましたが…)。

不動産業界内の全ての人に、本来であれば勉強が必要なはずですが、この業界の多くの人は、勉強を促したとしても、なかなか取り組まないということは、業界の内部で仕事をしていても容易に想像がつきます。

ですから、「せめて一社に一人」くらいは、しっかり勉強をしてくれる人がいてほしいと思います。

次は、民法と同列で重要な法律です。

・宅建業法

宅建業法については、宅建試験以来一切勉強などしたことがないという人も多いようです。
ですが、この業界で仕事をしている以上、継続学習は必須です。

その他の法律(都市計画法、建築基準法、犯罪収益移転防止法、農地法…)については、法律そのものの勉強をするというところまでは必要ないです(全部イチからやるのは無理です)。

したがって、不動産流通に関係がある法律の「不動産流通実務に関係する部分だけ」を勉強していくのが最も効率の良い勉強法です。

また、勉強する際に辞めた方が良いこととして「資格試験を受ける」という方法があります。

法律の勉強というと、すぐに資格試験を受けることを考えてしまう人がいますが、実務で使用する法律と、資格試験の勉強で学ぶ法律には、使用する部分に大きなズレがあることがほとんどです。
そのため、実務能力を上げるために資格試験を勉強していくのは非常に効率が悪くなります。
資格試験は「その資格がどうしても必要だから」その資格試験の勉強をするというスタンスを崩さないようにしましょう。

なお、不動産業界で働いているのであれば誰でも当然に取得すべき試験として「宅建士試験」がありますが、不動産流通の現場では、宅建士試験の勉強内容が実務で役に立つことはほぼありません。
そのため「宅建士試験への合格=不動産という人の一生を左右する重要な財産を取り扱う業界で仕事をすることができる最低限の学力を有する人」くらいに考えておくと、宅建士試験の難易度がしっくりきます。

なお、法律を効率よく勉強していく方法として、不動産流通の現場で契約時によくお客様に渡している「重要事項説明書補足資料」等を利用したり、役所でも建築基準法を分かり易く解説したパンフレット等を配布していることがあります。

そのような資料からその法律の概略をつかみ、それらの資料を消化した後に、実際の条文にあたる等して、もっと深く勉強をしていけばいいでしょう。
不動産業界における契約の担当者は、まずは「広く浅い」知識を身に付けることが重要です。
そうすることで、調査や契約等の段階で「(具体的には、何が問題なのか分からないけど)何か気になる…」という状態を作れます。

この「何か気になる…」ようになることがまず重要で、この部分について個別に調べていくと、トラブルの芽を事前に摘めることが多くなります。

「何か気になる…」という感覚は、知識がない人には絶対に手に入らない感覚ですので、このレベルに到達すれば、不動産契約実務で十分にプロのレベルだといえるでしょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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