境界工作物を参考にして現地調査を進める際のポイント

不動産物件調査をするときは、あらかじめ地積測量図を取得していきます。
ですが、調査対象の土地が過去に分筆等を行ったことがなく、地積測量図が作成されていないことがあります。

まずは、そのような場合の調査の準備について説明していきます。

なお、土地が整形地であれば、地積測量図がない場合でも、現地で土地を計測して面積を計算し、登記記録と比べてみれば、簡単に検証ができますので、大きな問題となることは少ないです。

ですから、今回は整形地ではない場合を想定していきます。

まず、事前準備としてできることは、隣接地の地積測量図の取得を試みることです。
隣接地の地積測量図がある程度揃えば、調査対象物件の形や辺長を明らかにすることが可能です。

隣接地の地積測量図もほとんど取得できない場合は、土地の現況や、住宅地図、公図から土地の範囲をある程度予測して調査を進める必要がありますが、この場合は、あくまで予測で調査をしていますので、調査している土地の範囲が大きくズレる可能性があります。

なお、調査が不動産の取引を目的としている場合、取引に先立って土地家屋調査士等による測量を入れることを売主に提案した方が良いでしょう。

その際、隣接する公有地や道路等との境界確認をするべきか否かについては、その土地の状況しだいで決めれば良いとは思いますが、最低限、調査対象土地と隣接する民有地との境界確認だけは済ませるべきです。

次に、実際現地ではどのように行動すべきかについて説明していきます。

現地では、まず調査対象土地の範囲を把握することから始めます。
そのためにまずは境界標を探します。

境界標が一部でも見つからない場合は、境界塀等の工作物から土地の範囲を予測して調査を進めます。
ちなみに、工作物のうち擁壁ですが、擁壁は、原則として擁壁の上に位置する土地の所有者の所有物となります。
そのため、例えば、調査対象の土地が擁壁の上側に位置する場合、その擁壁は本物件の所有物である可能性が高いです。
したがって、調査対象物件の土地の範囲は、擁壁の下の端である可能性が高いということになります。
また、工作物のうち境界塀については、現地の状況から所有関係(調査対象物件の所有物か、隣接地の所有物か、又は共有物か)を予測して調査を開始し、調査の中で隣接地所有者にヒアリングをしながら調査の精度を高めていけば良いと思います(ヒアリングの可否については、物件所有者等にあらかじめ確認する必要があります)。

そのようにして、現地調査を進めていきますが、この場合の現地調査はあくまでも予測に基づくものですので、契約にあたっては越境等が発見された場合の対処方法についてしっかりと取り決めをしておくべきです。

そして、契約から決済までの間に行われる土地家屋調査士等による測量を待ち、測量の結果、新たに越境物が見つかったら契約時にあらかじめ取り決めておいた方法で処理していきます。

なお、測量の結果、登記記録の地積と、測量した地積に大きな差異がある場合は、地積更正登記をした方が良いかもしれませんが、地積更正登記をする場合は「確定測量」をする必要がありますので、現地調査の結果、地積に大きな差異があることが疑われる場合は、契約前の打ち合わせの段階であらかじめ確定測量を行うように取り決めておきます。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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