不動産業界の未経験者がいきなり開業するにはどうすればいいか

不動産業を開業する方の王道は、不動産会社で営業として数か月間から数年間就職し、その会社である程度の実績を残すか、又は数回の転職を経てから「独立」というパターンです。

ですが、数は多くないですが一定の割合で「不動産業界未経験」のまま「即独立」するというパターンもあります。

そこで今回は、未経験で「即独立」をするにはどのようにすれば良いかについて説明します。

不動産業界未経験の方の独立の流れは、次のとおりです。

①独立後について入念にリサーチする。
②宅地建物取引士の資格を取得する。
③事務所を決める。宅建士の登録をする。
④宅建免許を取得する。
⑤業務が分からないときに業務について聞ける人を探す。

①独立後について入念にリサーチするについて
まず、不動産業界で仕事をしたことがない人は、不動産業界がどのようなものかについての情報を収集しておくべきです。
それには、まず本から情報を収集するのが効率的でしょう。
なお、本を選ぶ際は「業界について網羅的に説明されたもの」を1冊と、「実務が説明してあるもの3~4冊程度」を読めばよいでしょう。
「これだけ?」と思われるかもしれませんが、たくさん読んでも書いてある内容はほとんど変わりません。
また、たくさん本を購入するのにもお金がかかりますので、何冊も読むのではなく「同じ本を何度も読み込んで、理解できない部分についてはインターネットで調べる」ようにすると効果的だと思います。
そして、本を読み込みながら「自分がどのようにして不動産業界でお金を稼いでいくかのイメージ」を作っていきましょう。
そのためには不動産業界における「集客」が完全にできるイメージを持てるくらい集客についても調べ尽くしていきましょう。
また、お金を貯めていくことも忘れてはいけません。

②宅地建物取引士の資格を取得するについて
宅建士の資格は、社長自らが持ってなくても、従業員が持っていれば不動産会社を作ることはできます。
ですが、不動産会社を設立するのであれば、社長自身も絶対に「宅建士資格を取得すべき」です。
特に不動産業界未経験の独立開業者の場合、業界未経験で、かつ、宅建士も持っていないとなると「業界経験者で、かつ、宅建士でもある従業員に舐められる」ということが起こるかもしれません。
そうなると会社の運営に支障が出てますし、その社員(宅建士)が唯一の宅建士だった場合には、退職させるわけにもいきません。
また、社長が宅建士資格を持っていないということは、その時点で「最低でも一人(宅建士資格所有者)は従業員を雇用する必要が生じる」ということであり、コスト面でも痛手になります。
なお、宅建士試験は簡単に合格できるというレベルの試験ではありませんが、「しっかりと勉強時間を確保してコツコツと勉強していけば確実に合格できる試験」ですので、不動産業を開業するためのやる気を試されていると思って資格試験を乗り越えるようにしましょう。
ちなみに、不動産業界未経験の方は「宅建士=不動産のプロ」と思っている方もいるかもしれません。
ですが、宅建士を取得したくらいでは不動産のプロと呼べるようなレベルには全然到達できません。
これは、私の感覚なのですが「宅建士試験の知識≒不動産流通業務全体の5%」くらいではないかと思います。
したがって、宅建士試験に合格することによって、不動産という人の一生を左右するような重要な資産を扱う仕事をするための入口に立てたと考え、不動産業開業後も自己研鑽を続けていかなければなりません。

③事務所を決める。宅建士の登録をするについて
①で業界の知識を仕入れ、②で宅建士試験を取得しましたので、次は事務所探しに着手します。
なお、不動産業の開業で準備をするものは、パソコンやデスク等、少量の事務用機器のみで十分ですので、最初は「できるだけ質素な事務所を選ぶ」ことをお勧めします。
また、できるだけ初期費用を抑えたいのであれば、コピー機は外部のサービスを利用し、車もカーシェアを利用する等の工夫をしていくと良いです。
最初は「名刺」「パソコン」「デスク」だけで開業し、必要に応じて買い足していくようにするのもお勧めです。
なお、不動産業開業のための事務所には要件があり、この要件を満たさない事務所では宅建免許の取得ができません。
ですから、あらかじめ「宅建免許申請の事務所要件を満たす事務所なのか」を、事務所の契約前に確認する必要がありますし、物件の所有者から「この部屋で不動産業を開業しても問題ない」という旨の確認をしておく必要があります。

そして、事務所選びと並行して、宅建士の登録も進めていきます。
また、創業時には創業融資の利用の有無について検討すると良いでしょう。創業融資は文字通り「創業時」に借りられる融資で、有利な条件で借りられることも多いので、活用を検討しておくと良いでしょう。

④宅建免許を取得するについて
いよいよ宅建免許申請をします。
なお、不動産会社の場合「創業融資」「株式会社設立」「宅建免許取得」がセットとなります。
なお、これらの手続きを自分でやりたいという方もいるかと思いますが、頑張って自分で手続きをしたとしても「会社設立等の知識は、不動産業の実務にはあまり役に立つことはない」ので、手続きは行政書士(登記は司法書士)に依頼をして、開業者は自分にしかできない準備を進める方が効率的だと思います。

ちなみに、行政書士に仕事を依頼をするにあたって、基準は次の2通りあります。
(1)単に会社設立、宅建免許申請等の手続きだけを依頼したい場合
(2)手続きをやってもらうことにより、その行政書士との関係を作りたい場合

(1)の場合であれば、できるだけ安く手続きを請け負ってくれる人に依頼をするのが良いと思います。
インターネット上には、安さを売りにしている行政書士がたくさんいます。
(2)の場合であれば、その人自身の経験や知識、人脈が「開業後の自分にとって役立ちそうだ」と思っているはずですので、値段で選ぶことはせず、素直にその行政書士が提示する値段で仕事を依頼した方が良いでしょう。

⑤業務が分からないときに業務について聞ける人を探すについて
いよいよ開業ができましたが、開業しただけで仕事が取れるほど甘くはないことは良くお分かりかと思います。
①のときに学んでいた方法を駆使して「集客」に取り組みます。
初めからうまくいかないとは思いますが、試行錯誤して「うまくいかせられる」まで続けましょう。
また、自分から積極的に人脈作りをしていきます。
ただし、人脈は「たくさんあれば良いというわけではない」ですし、いきなり同業者等の事務所を訪問しても煙たがられるだけでしょう。
人脈づくりの一つのパターンとして、「自分で集客した顧客を紹介し、一緒にお手伝いさせてください」と言って実務を見させてもらうということが考えられます。
お互いに宅建業という、業界の仲間でもありライバルでもある関係ですので、相手にとって何のメリットもないお願いは避けた方が良いでしょう。
仮に集客が思うようにできなかった場合でも、相手にとって自分と付き合うメリットは何かをよく考えれば、何かしらのメリットを与えられるはずです。
いろいろと試行錯誤しながらできることは全部試してみましょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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