書類の誤字脱字を些細なミスだと思っている不動産業者は即刻その認識を改めるべき

不動産業者は、契約書や合意書等の書類をたくさん作成します。

ですから、私はつねづね不動産業界の仕事は「士業の仕事と同じ」だと思っていますし、部下にもそのように指導しています。

つまり、優れた不動産業者(又は担当者)は、それだけ高度な書類作成能力を備えているということでもあります。

ですが、残念なことに、この業界には、契約書等の「誤字脱字のミス」はミスとも思っていないというような業者(及び担当者)もたくさんいます。

例えば、先日、次のようなグチをこぼす契約書作成担当者に会いました。

「契約書を作成して、本社の契約書チェックの担当部署に依頼をするが、毎回、誤字脱字や、言葉の言い回しの指摘ばかりをされる。」

確かに、指摘されているのは「誤字脱字」や「言葉の言い回し」ばかりなのかもしれません。

ですが、もしかすると、この作成担当者の中では「しょせん言い回しの指摘に過ぎない」と思っていることに、実は重要な事項が隠れており、そのことにこの担当者は気づいていない可能性もあります。

なぜなら、この担当者は、不動産知識に対する自信はあるようでしたが、私から見れば「不動産のことなどロクに分かっていない」という印象を受けるレベルだったからです。

この程度のレベルの担当者なのだから、本社の指摘の中にある「重要な事項」に気づけるレベルではない可能性もあります。

また、契約書を作成するプロなのであれば、たとえ誤字脱字のミスであっても「恥ずべきミス」だと認識すべきだと私は思っています。

これは、私の認識のレベルが高いというわけでもなんでもなく、まともに仕事をしている「士業」の世界では、全員このような認識で仕事をしているのではないかと思います。

ちなみに、このレベルの認識を持ってしても、自分で作成した書類の誤字脱字を探すのは難しいものです。

ですが、士業にとって書類は成果物ですので、「誤字脱字がある書類をお客様に提出するわけにはいかない」という意識を持っていれば、大幅に誤字脱字を減らすことはできます。

これは不動産業者(及び担当者)にとっても同じことが言えます。

不動産業(特に不動産仲介業)にとっては、重要事項説明書や売買契約書は、士業と同様に「成果物」なわけです。
この成果物に「誤字脱字」が散見されるような状態だったら、お客様はどのように感じるでしょうか。

いや、お客様がどのように感じるかということよりも、プロである不動産業者(又は作成担当者)は、恥ずかしくないのかと不思議に思ってしまいます。

確かに、気を付けて書類を作成していても、誤字脱字が発生することはあります。
でも、大事なことは、誤字脱字がある書類(成果物)をお客様に提出してしまったという事実に対して、恥じ入る気持ちがあるかということです。

「誤字脱字など大した問題ではない」と思ってしまっている人は、そもそもそのような気持ちなど微塵もなく、改善する必要性を感じていないようにも思えます。

もしそのように思っているのであれば、その人の書類作成能力は、そのレベルで頭打ちになるでしょう。

そして、そのレベルで頭打ちになるということは、書類作成の前提になる物件調査や、法改正等についてまで、頓着しなくなってくるということは間違いないでしょう。

したがって、このような業者が、このまま営業を続けていれば、大きなトラブルを起こす可能性が増してきます。

誤字脱字等の小さなほころびから、大きなトラブルに繋がるということは、どの業界でも良く言われていることです。

私が20代のころに職人として勤務していた職場でも、何か危険な兆候があると「ヒヤリハット」だと盛んに言われていました。

なお、ヒヤリハットとは、1件の重大事故の裏には、29件の軽傷事故があり、300件の無傷事故があるということで、この300件の無傷事故をヒヤリハットと呼んでおり、重大事故を防ぐためにもヒヤリハットを見逃さないようにしようということでした。

不動産業における書類の誤字脱字とは、まさにこのヒヤリハットに相当するのではないでしょうか。

これを「たいしたことない」と考えているようでは、そのうち29件のクレームが発生し、1件の重大事故に発展してしまうものまで出てくるということです。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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