〇〇専門の不動産屋のやりがいと落とし穴

不動産業での新規の独立開業者が、普通に開業してもなかなか勝てなさそうだということで、どこかの分野に専門特化して独立開業をしようとする例があります。

専門特化の例と言えば、次のような形態です。

・相続専門の不動産会社
・店舗専門の賃貸仲介会社

確かに、専門特化することで他の売買仲介業者や賃貸仲介業者とは一線を画す存在となり、集客的にもメリットがあるでしょう。

ですが、専門特化をするためには、相当の勉強量を積み重ねが必要になります。

不動産仲介業で普通にサラリーマンをしていたような人は、そもそも相続の知識自体ないに等しい状況でしょうから、独立開業していきなり「相続専門」と名乗り、仮に来客があったとしても、相続の相談を受けること自体が難しいという状況でしょう。

ですから、専門特化する部分については、開業前からしっかりと勉強をし、かつ、一生勉強を続ける覚悟が必要になります。

なお、店舗専門の事務所の賃貸も同様です。

店舗専門にするということは、通常の賃貸仲介ではあまり気にしない用途地域等にも気をつけなければなりません。
店舗の存する用途地域によっては、仲介したお客様がやろうとしている事業が開業できないということもあり得ます。

そのため、テナントが空いているという理由だけで、安易に仲介をしてしまうと、後で大きな損害賠償請求をされる危険性もあるのです。

ですから、店舗専門に特化するにあたっても、しっかりと準備をする必要があります。

さて、このような専門特化不動産会社の設立にあたり、必要な準備をしっかりとし、開業後しっかりと実務を処理して会社を軌道に乗せれば、その地域で生き残っていくのはそう難しいことではなさそうです。
ただし、見込客数の少なさや、案件化まで時間がかかることから、軌道に乗せるまでに時間がかかることはあるかもしれません。傾向にあるようです。

こうなってくると、一般的な不動産会社の競争からは外れますので、経営面でのメリットが生まれてくるでしょう。
また、専門特化した不動産会社では、士業のような、先生としてのポジションが取りやすくなりますので、営業もやりやすくなってくる傾向にあります。

このように、いいことばかりのように見える専門特化不動産会社ですが、落とし穴もあります。

それは、人材の育成が難しいということです。

人材の育成が難しいということは、会社の規模の拡大が難しくなりますし、それ以前に、いつまでも社長自身が実務レベルで仕事をしなければならない可能性も出てきます。

本当に士業のような専門職の働き方を強いられる可能性が出てくるということです。

なお、このような働き方でも満足だという方も多いので、そのような方には、専門特化不動産会社として独立開業をするのはお勧めです。

当然簡単ではありませんが、やりがいは大いにあると思います。

ちなみに、話は変わりますが、専門特化というと変な形で特化しようとする方がときどきいます。

例えば、次のようなものです。

・(渋谷専門等の)狭い地域を専門と称する不動産会社
・女性専門の不動産会社

これらの「専門」は、意味がないので辞めておきましょう。

そもそもお客様が「渋谷専門の不動産会社」だからという理由で、その不動産会社を選ぶことはありません。

また、女性専門の不動産会社だという理由で、女性があえてその不動産会社を選んで来てくれるということもないでしょう。
(なお、女性が経営している不動産会社だという理由で、安心して女性のお客様が来てくれるということはあると思いますが、これは「女性が経営している不動産会社」だというだけであって、特に「女性専門の不動産会社」とする意味はありません。)

ですから、このような「専門特化もどき」にせず、しっかりと専門分野を確立させることを目指しましょう。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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