調査の素人が起こしがちなミスについて

不動産調査を完璧に行うためには非常に多くの法令の理解を伴います。

その知識と経験を身に付けるには、日常的に勉強をする時間を設けることが重要です。

ただし、膨大な勉強が必要だからといって、受験生のように一日何時間も勉強をしろと言っているわけではありません。

むしろ机上の勉強については、一日何時間も勉強するよりも、不動産の実務に一生懸命に取組みながら、一日30分から1時間程度の勉強をコツコツと続けることが大事です。
そもそも机上の勉強だけで実務を伴わない人は実務家として一流にはなれません。

そのようにして不動産流通実務のプロになっていきますが、本日は「調査の素人が起こしがちなミス」について説明していきます。

今回の調査ミスですが、例えば「調査スタッフとして未熟な者」や「調査を本業としない営業担当者」がやりがちなものです。
そのミスを見抜くためには、報告を受ける側(上司等)にしっかりとした知識が必要だということになります。

未熟な調査員では、調査ミスが多く、また報告を受ける側も騙されやすいのは次の2点です。

①私設管の管理
②道路側溝に越境して設置された車の乗入れのコンクリート(道路側溝に設置されたグレーチングも含む)

①私設管の管理について
調査対象物件が使用をしている(又はこれから使用したい)上下水道管は、公の所有であれば、問題になることはあまりありません。
ですが、公の所有ではない私人所有等の管の場合、次のような追加調査が必要になります。

・誰が所有している管なのか
・その管を使用できるのか
・維持管理はどうするのか

私設管の場合に「何を注意しなければならないのかが理解できている」場合は問題なく調査が行えるのですが、不動産知識が未熟な者が調査を行った場合、よく次のような回答を役所の窓口で言われて帰ってきます。

「道路内での漏水等の場合は市にて対応するとのこと→公の維持管理」

私設管ということが調査で判明した後に「維持管理はどのようにしているのか」ということを聞いた結果(調査記録にそのような欄があるので、その欄を埋めようとしただけ)がこれです。
ここで報告を受ける側は疑問に思わなければいけません。

「漏水等の場合は市で対応?それはそうかもしれないね。漏水させたままというわけにもいかないからね」

報告を受ける側としては、この疑問に到達できることが重要です。

なお、疑問を持ったら、調査担当者に追加で質問をします。

「老朽化等で、敷設替えが必要になった場合は、市で新しいものに交換してくれるということ?」

それを確認させると「所有者の負担となるようです。」という答えが返ってくることが大半です。

なお、ここまで聞いて初めて「誰が維持管理をするのか」がハッキリします。
これにより、もともとの調査結果が正解だったということも当然あります。
調査担当者から見れば、無駄な再調査をさせられたという気持ちになるかもしれませんが、プロとしてやるべきことはやらなければいけませんし、根本的な原因は、初めから深いところまで調査しきれない調査担当者にありますので気にする必要はありません(こんなことを本人に直接言うと「いじける」ので、やさしくフォローだけはした方が良いかもしれません)。

ちなみに「私設管」だということが判明した場合には、原則として、その管の所有者等から「使用承諾」を取得する必要が生じます。

②道路側溝に越境して設置された車の乗入れのコンクリート(道路側溝に設置されたグレーチングも含む)について
中古住宅の調査でときどきあるのが「道路側溝の上部に車の乗入れのためにコンクリートのスロープを打設している」というパターンです。

これについて、素人の調査員担当者は「このスロープについては、役所で許容する旨聴取(問題なし)」と報告してくることがあります。

この報告に対して、「いやいや、そもそも違法状態なのだから役所が許容するなどと言うわけがない」という考えに至らなければいけません。

おそらく役所では「道路にスロープを打設しているのは違法状態だが、一つひとつ確認していくのは現実的に不可能なので、積極的に取り締まることはできない」という趣旨のことを言っているはずです。
ただ、この趣旨の発言を未熟な調査担当者は理解できず「役所が取り締まらない」→「役所が許容した。問題なし!」と勝手に脳内変換してしまうのです。

当たり前の話ですが、違法状態のまま使い続けて何らかの事故が発生した場合、責任は当然「所有者にある」ということになります。

また、それに関与した宅建業者も、何も説明してないのだとしたら、責任は発生するでしょう。

ちなみに素人調査員は自分ではしっかりと役所で調査してきたつもりでいますので、自信満々で報告してきます。
その自信満々の態度が報告を受ける側の判断を鈍らせることがありますので、注意が必要です。

このように厄介な素人調査員ですが、これらの調査ミスを見つけるためには、報告を受ける側にも「確固たる知識(不動産の原則)」を理解していなければいけません。

この原則を身に付けるためにも、継続的な学習が必要だということです。

実務だけでは知識が偏りますし、机上の勉強だけでは実務に対応できません。

やはり実務と勉強のバランスが大事になります。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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