※今回の記事は、物件調査の件が中心となっていますが、調査に限らず、全ての業務について当てはまりますので、参考にしていただければと思います。
社長と設立当初の古参社員は、事業を自分たちで組み立てていきます。
例えば、不動産業においては、物件調査における調査項目などは、調査や取引の過程で、何かトラブルがあるたびに「次回からこの調査項目も新たに追加しなければ…」といった具合で付け足されていきます。
また、よく勉強する方であれば、自ら「この項目も必要かも…」と調査項目の追加が行われることもあります。
そのようにして、調査項目はどんどん増えていく一方になります。
ですが、たとえ調査項目が増えた場合でも、社長や古参社員は、自分たちで少しずつ調査項目を追加してきた歴史がありますので、その内容について良く分かっています。
ですから、業務に全く支障が出ません。
一方で、あとから入ってきた従業員たちはどうでしょうか。
調査項目が増えた後に入社した社員は、その調査項目の多さに困惑してしまうことが多いです。
調査項目の多さから、しっかりと調査ができるレベルに成長するまでに、かなりの期間を要するという状況になってしまうこともあります。
ですから、会社としては、ときどきは調査項目が「過度」になっていないかの精査をし、不要な項目をカットしていく必要があるのです。
なお、このように書くと、「もともと必要性があって追加したのだから、不要な部分などあるわけがない」ということを言う人がいます。
ですが、本当でしょうか。
調査資料の中に、今まで一度も登場したことがない項目(書籍やインターネットの情報を見て付け加えたような項目)や、繰り返しになっている項目(2か所以上登場する項目)はないでしょうか。
このような項目こそ「過度」なものということになります。
なお、過度になっているということは、その分だけ無駄なコストがかかっているということですので、カットの対象です。
また、社長や先輩社員が、後輩社員等に仕事を教える際に、ときどき起こる弊害があります。
それは、「自分は苦労して、この仕事を作り上げ、かつ、できるようになったのだから、後輩社員も、自分と同様に苦労するべきだ」と考えてしまい、「過度に厳しくしてしまう」というものです。
社長や先輩社員が、設立直後の「ヒト・モノ・カネ」がない時代に苦労して今の会社のシステムを作ってきたことは分かりますが、同じ苦労を後輩社員にまで押しつける必要はないでしょう。
むしろ、苦労の結果、本当に必要な部分だけが取捨選択されているものを、後輩社員に渡してあげる方が、後輩社員が育つ可能性が高まります。
ですから、「自分が普段行っている仕事が本当に意味のあるものなのか。」「ムダになっているものはないのか。」ということについて、定期的に見直さなければなりません。
なお、見直す際のポイントですが、「カットするときは、大胆にカットをする」ことです。
大胆にカットとは、例えば「直近2年間で登場していない調査項目については、一度削除する」というようなカットの仕方です。
これには理由があります。
「増えた調査項目で仕事ができるようになっている人」というのは、社長や古参の従業員ということになりますから、社内での発言力が強くなります。
その「発言力が強い社員」は、既に仕事ができる人なので、わざわざ調査項目をカットするメリットは何もないのです。
そのため、コストカットを目的として、項目の検討を始めても、どうしても「カットする項目はない」という流れになっていきがちです。
ですが、このカットは、「まだまだ仕事ができない新人や、これから入社してくる人」のために行うものです。
社長や古参社員は、この「これから入社する新人のためにカットする」ということをよく理解した上で、大胆にカットをしていくようにしましょう。
ちなみに、当然のことながら、既に仕事ができるようになっている古参社員も、調査項目をカットしたからといって、その分だけ、実務能力が落ちるというようなことがあってはいけません。
ただし、社長だけは、実務を自分の右腕となる社員に渡した後は、不動産流通に関する実務レベルを多少落としても構いません。
社長としては、実務よりもやるべきことは、他にたくさんあります。
そのため、実務はできるだけ、自分の右腕に任せられるよう体制を作っていく必要があります。