建築基準法に適合しない擁壁がある場合の考え方について

調査対象物件が「大谷石擁壁のような既存不適格の土留め」が施工されていたり、「ブロック塀施工のような法令違反の土留め」が施工されている物件だった場合、どのように調査を進めていくかについて説明します。

①擁壁に異常がないかを確認する。
法令の適合の有無にかかわらず、擁壁に異常(亀裂、はらみ、ひび、傾き等)がないかを確認する必要があります。
安全性について気になることがあれば、売主に専門家への調査を提案すべきです。

②擁壁の高さを計測する。
擁壁は「宅地造成等規制法」「都市計画法」「建築基準法(高さ2mを超えるもの)」によって築造されるため、どのような経緯で築造がされているかを役所で確認するために、擁壁の高さを計測しておきます。

なお、擁壁築造当時、公による検査を経たものであっても、経年劣化等により安全性が損なわれるという可能性は大いにありますので、擁壁の異常の有無についてはしっかりと現地で確認をしておく必要があります。

なお、役所調査の際に、現地の擁壁の写真を見せて「この擁壁は問題ないか」を確認することも有効ですが、取引が成立するか分からない単なる調査の段階では、物件所在地等は伏せて調査をすると良いでしょう。
その場合の役所でのヒアリングの方法は「参考のために確認したいです。役所に来る途中でこの写真のような擁壁があったが、この擁壁は問題ないのでしょうか」みたいな感じがよいかと思います。

③建物の建替えの際に擁壁が問題にならないかを確認する。
①の安全性についての確認と、②の役所での確認を踏まえて、調査対象物件に建物を建てる際に擁壁が問題にならないかについて検討します。

擁壁が最も問題になる場合とは「建物を建てる際には、擁壁の築造し直し(既存擁壁の解体撤去、再築造)が必要になる」というパターンです。
擁壁の再築造は、擁壁の規模にもよりますが、数百万円単位の費用が掛かる可能性があります。
そのため、建物を建てることが決まっているのであれば、あらかじめ設計を依頼する建築士等に擁壁の安全性(既存の擁壁のままで建築確認が取れるか等)について確認をしておくべきです。
建築士等の専門家の意見を踏まえた上で、擁壁を再築造するのか、擁壁に土圧がかからないように深基礎にするのか等の検討をします。

なお、擁壁を既存のまま使用して建物を建てられたとしても、擁壁が崩れる等により、他人に損害が出た場合は、所有者等の責任となりますので、擁壁の安全性については慎重に検討する必要があります。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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