いい人でいたいという人は、専門家になり得ない

世の中には、どうしても「いい人でいたい」という人がいます。

この「いい人でいたい」という人というのは、どんなに仕事熱心、勉強熱心な人であったとしても「その道の専門家」として第一線で活躍することはできません。

ですから、このような人を社員として採用できたとしても、社長の右腕と呼ばれるような幹部社員にまで成長することはないでしょう。

なぜなら、いい人でいたい人というのは、原則として相手の要求に対して、肯定的な返事をしたい人だとも言えるのですが、専門家というのは、ときには「ダメだ」と否定的な返事をしなければならない状況が訪れるためです。
しかもそのような状況というのは、けっこうな頻度で訪れます。

つまり、専門家というのは「いい人でいつづけることが原則としてできない人」ということになるのです。

この「いい人でいたい」というのは、本人の性格に起因するところが大きいので、ある意味仕方がない部分もあります。

ですが、せっかく採用した社員が、仕事も勉強もよくする社員だった場合、社長としては「将来は自分の右腕(幹部社員)となる資質を持っているかもしれない」と期待をしてしまうこともあるでしょう。

そのように期待をしつつ、数年間その社員を大事に育て、いざ自分の右腕として会社の実務を任せ始めたところ、数か月で退職してしまったという例もあります。

これには、その会社の社長もショックを受けていました。

結局この社員は、社長の指示のもとで動いているときはよかったのですが、社長から仕事を任せられるようになった段階で、社長や社員、取引先に「ダメだ」といわなければならないという状況に大きなストレスを感じてしまったようでした。

この「いい人でいたい」という性格については、意外と本人も気づいていないということが多いです。

というのも、「嫌われたくはない(いい人でいたい)」という気持ちは、多かれ少なかれ誰しも持っているものだからです。

そして、この「嫌われたくない(いい人でいたい)」という感覚が、専門家としての意識を上回ってしまうと、過度のストレスとなってしまうということがおきるのでしょう。

ですから、社長としては、社員を適切な方法で育成していくのはもちろんですが、育成の途中で、専門家(社長の右腕・幹部社員)となり得る適正があるかということを見極めていく必要があります。

そして、よく勉強はするが、性格的な適正が低いと判断する社員は、できるだけ「社長を含む、他の幹部社員の指揮のもと、仕事をさせた方がよい」と思います。

誰かの指揮監督下であれば、いい人でいることは簡単だからです。
つまり、誰かの指揮監督下で、他の社員に対して「ダメだ」という返答をするのであれば、結局は「(私はダメだとは思わないけど、社長がダメだというので)ダメ」だとという趣旨の返答の方法ができるということになり、自分はいい人でいることができるため、過度のストレスがかかりにくいのです。

ですが、このポジションでも気をつけなければならないことがあります。

それは、指揮監督下に置いている社員を、社長(指揮監督者)と他の社員との板挟みにさせないことです。

そもそも「いい人でいたいという人」は、板挟みにあったときに、本来の性格である「いい人でいたい」という側面が強まります。

そのため、最悪の場合、指揮監督者(社長等)を説得しようとすることすらあります。

それでもなお、指揮監督者から、この社員に対して「いいからダメだと言え!」みたいなことが起こることがあります。

そうなると、この社員にとっては過度のストレスとなり、いずれ退職ということに繋がっていくでしょう。

ですから、社員が板挟みになる状況になりそうな場合は、すぐに指揮監督者が引継ぎ、社員に過度なストレスがかからないように対処していくべきでしょう。

ここまで読んでいただいた方はもうお分かりだと思いますが、「いい人でいたい」という人は、責任の重い仕事はできないということになり、何年たっても社長や幹部社員の使いぱっしりのような仕事をすることになるでしょう。

ですが、社長としては、一生懸命勉強をして、自分の能力を高めようとしてくれる社員が貴重な存在であることには変わりはありませんので、途中で失望したりせずに大事に育てていくとよいと思います。

なお、話は少し横道にそれますが、この「いい人でいたい人」は、たとえ退職するという段階でもいい人でいたいので、変に被害者ぶって社内をひっかきまわして辞めるということが起こります。

例えば、次のような社員がいました。

社長から約2年も目を掛けられて育ててもらい、満を持して責任のあるポジションを任されたところ、わずか数か月で退職してしまったという社員です。
この社員の場合、直近で社員旅行(沖縄)に連れて行ってもらい、さらに、ボーナスをもらい、新たに有休(12日間)をもらったうえ、その有休を全消化して退職していきました。

そのような状況にも関わらず、しっかりと「被害者のような態度」を貫いていました。

これには、さすがに私も疑問でした。
確かに、社員旅行等については、社員の権利なので、大いに活用すれば良いと思います。
ですが、被害者のような態度はどうなんでしょうね。
せめて周りには感謝して辞めていく等をすべきではなかったのか。

私は、原則として社長側の人間ですので、どうしても社長がかわいそうでなりませんでした。
社長なんて誰にも文句も言えませんからね。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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