経営者は社員に愛情を持って厳しく接すること

「自分は社員に嫌われることを気にもしない」という経営者の方もいます。

ですが、どうなんでしょうかね。

「嫌われることを気にしない」というのは、その分だけ社員に厳しく接することができるという意味だと思いますが、私は、経営者は社員から嫌われたら原則としてアウトだと思っています。

このようにいうと、「社長が社員に媚びる」というような意味だと曲解されてしまうこともあるのですが、そうではありません。

むしろ社員に媚びるような経営者こそ社員から見下され、最終的には嫌われてしまうでしょう。

不動産会社の経営者は、不動産流通というビジネスを通じて真剣に市場で戦っているわけですので、従業員に甘い態度ばかり取っていていたら、到底勝ち続けることはできません。

そのため、社長たるもの、原則として社員には厳しく接する必要があるのですが、厳しく接する際にもポイントがあります。

それは、社員に愛情を持って厳しくするということです。

この愛情があるかどうかで、社長が社員から嫌われてしまうのか否かの結果に大きな差が生まれてきます。

当然「厳しい」ので、社長が社員から好かれるということは、原則としてありません。

ですが、愛情をもって接している限り、嫌われる可能性はかなり低くなります。

確かに、経営者は、「会社=自分自身」になることがほとんどであり、なかなか成果を上げられない社員には愛情など持てないという気持ちも分からないではないです。

ですが、そこは考え方を変えて、そもそもその社員が成果を上げられないのは、何もかもその社員の責任なのかについて考える必要があるでしょう。

本来、従業員に仕事をさせる際には、「週5日、一日8時間、サボることなく言われたことのみをしていれば、最低限の成果を上げられる」ように会社が仕組みを作っておく必要があります。

そのように仕組みを作ったにもかかわらず、従業員が成果を上げられないというのであれば、「その仕事が、その従業員の適性に合わない」ということなのでしょうから、その場合は、いずれその社員には辞めてもらうことになるでしょう。
適性に合わない仕事を一生懸命やろうとするほど不幸なことはありません。
どうしても適正に合わないのであれば、やめてもらった方がお互いにとって幸せです。

この辞めてもらうにしても、普段から愛情を持って接していれば、感情的にこじれてしまう可能性は低くなります。

なお、愛情を持って接するとは、会社ではなく、その社員を中心にして仕事をとらえるということです。

その社員を中心にするとは、どういうことかというと、その社員が将来進みたい方向と、仕事を合わせてあげるという方法です。

その社員が進みたい方向に仕事を合わせるとはいうものの、各社員を好き勝手に働かせるというわけにはいきません。

私が言いたいのは、「日々の業務の中で、その社員が将来やりたいことに少しでも近づくことは何かを探してあげ、その業務に関連した能力から先に伸ばすように促す」ということです。

幸い、不動産業というのは「営業担当者一人で、幅広い業務を経験」します。
幅広い業務とは、集客、営業、案内、重説・売契・合意書等の作成、契約、決済、引渡し、アフターフォロー、トラブル処理等です。

このように幅広い業務を一人で経験できますので、それぞれの社員の将来の目標と、仕事の内容を合致させることはそれほど難しいことではありません。

例えば、「趣味で音楽をやっており、将来は音楽で食べていきたい」という社員がいるとします。
その社員に、「日々の仕事の中で、将来の自分の目標に一歩でも近づけること」は何かを考えさせます。
一見役立つことは何もなさそうに思えますが、「音楽をやっていると、書類を作成する機会が意外に多いけど、書類作成を苦手としている人も多い。だから、自分は、まずは書類作成能力を伸ばすことに注力する」ということがあります。
現在の仕事の内容が、自分の将来の目標と繋がると、自然と積極的になり、その分だけスキルアップを早めることができます。
ちなみに、この例で登場した社員は、実際の私の部下をモデルとしていますし、結局この社員は「やっぱり音楽で食べていくのは難しそうなので、音楽は副業程度に続ける」との結論に至り、本業の不動産業でも活躍してくれています。

社員に愛情を持って接することなしに、音楽の話も聞かず、単に社員に厳しくするだけだったら、この社員は途中で「音楽をやりたいから辞める」といって辞めてしまっていたかもしれません。

このように、社員に愛情を持って接するというのは、決して社員に媚びるというわけではなく、その社員の目標を認めた上で、最大限会社に貢献してくれる方法は何かを考え抜くということです。

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この記事を書いた人

・略歴:会社員時代、調査・契約部門のトップを6年間にわたって務め、直接かかわった売買は5,000件以上です。また、調査・契約の専門職員や営業社員を全国で100名以上育成しています。
・保有資格:宅建士、行政書士、簿記、FP、TOEIC等

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